具体的にはこんなしくみだ。
「●委託者(財産の持ち主)、●受託者(託された財産を管理・運用・処分する人)、●受益者(管理・運用・処分による利益を受ける人。委託者と同一人でも可能)と、◆信託財産(託される財産)の範囲、◆信託の目的(「親の安心安全な生活のため」など)を定めます。
信託財産は、便宜上、受託者の名義に変更されますが、信託財産が金銭なら、“信託用口座”を新たに開設して移し、不動産の場合も“受託者(氏名)”といった名義で登記され、受託者個人の財産とはしっかり区別。たとえば委託者(親)の介護のために受託者(子)の権限で解約した定期預金などの金銭、家賃収入、不動産の売却益などは、すべて受益者(親)に給付・分配されます。
委託者が元気なうちは、自分の財産の使い方を受託者に指示することもできますし、認知症になったら、あらかじめ定めた目的に沿って管理してもらい、受託者の責任と判断で積極的に運用してもらうこともできます」
ただし注意が必要なのは、認知症を発症した後では家族信託の契約を結べないこと。
「契約の内容を家族間で自由に設計することができる一方で、契約締結時にはしっかりした判断能力が必要なのです。家族信託のメリットを十二分に利用するためにも、早めから検討し、導入しましょう。
また受託者となる子が、契約内容を巡りきょうだい間でトラブルになることがあります。必要に応じて、受託者の管理状況を監督する●信託監督人をつけることもできます。いずれにしても関係する家族全員で情報を共有し、よく話し合って決めることが大切です」
■家族信託のポイント
【1】家族の財産管理を家族の中だけで行える。
【2】定めた目的に沿っていれば財産を積極的に運用できる。
【3】財産を託せる信頼できる家族(受託者)がいる人向け。
【4】認知症で判断能力が低下すると利用できない。
※女性セブン2017年11月2日号