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止まらない「百貨店離れ」、失われた“デパートらしさ”とは

百貨店は本来、大衆的で気軽な場所

 こうした変化の原因について『胸騒ぎのデパート』(東京書籍)の著者で放送作家の寺坂直毅さんが話す。幼稚園の頃からデパートに通い詰め、全国約250の店舗に足を運んで見えてきたのは、“今のデパートはかつてのデパートらしさを失っている”ということだ。

「ぼくは今でもデパートが大好きです。でも行くのは地方のデパート。都心にあるデパートは、昔と大きく様変わりしました。

 昔は、デパートといえば電化製品があったり本屋があったり、百貨店という名の通り、百の物を置いていました。ところが今はファッションに特化するなど専門店化してしまい、また、それぞれに独自の個性がなく、どこに行っても同じ。その点、地方の百貨店は、そこに住む人のニーズをダイレクトになるべく取り入れようとして変化しますから、それぞれカラーがあって面白いんです」

 寺坂さんの言う“デパートらしさ”は、「気軽さ」だと続ける。

「百貨店というと、高級な特別な場所、という感じですけど、実は正反対。本来は、大衆的で気軽な場所なんです。だから家族で連れ立って楽しむことができた。でも、今は都心を中心に高級化が進み、なんとなく緊張感を与える感じがあって…キラキラしすぎて行けないんです(笑い)。休日に、少しおしゃれして家族みんなで楽しむ、それができるのも普段使いできる親しみやすさがあるからなんです。品揃え、親しみやすさともに、百貨店にはなくなってしまい、ショッピングセンターがその役割を担っているんでしょうね」

 百貨店最大手の三越伊勢丹は昨年度、8年ぶりに赤字を計上。堅調な競合他社との比較として、「ショッピングセンターとの複合に出遅れた」という見方もあり、高島屋SCのような業態を含めた、百貨店とショッピングセンターとの融合は今後増加の可能性もある。

 便利で安いショッピングセンターも好きだけど、やっぱりデパートはデパートらしくあってほしいという複雑な女心──「デパートでお買い物」という私たちのトキメキには、どんな未来が待っているのか。

※女性セブン2018年6月7日号

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