田代尚機のチャイナ・リサーチ

止まらない人民元安、米中貿易紛争の影響も大きく

昨年5月以来の人民元安水準に

 人民元安が止まらない──。8月6日の人民元対ドルレート基準値は前営業日と比べ191ポイント下落し、1ドル6.8513元となった。これは2017年5月31日以来の元安水準である。日中の取引は寄り付き前に発表される基準値に対して±2%の範囲で自由に取引されるが、この日の終値は前営業日と比べ0.39%高い1ドル=6.8538元で取引を終えている。

 3日に中国人民銀行は8月6日より先物為替取引業務に関する外貨リスク準備金をこれまでの0%から20%へと引き上げると発表した。先物為替取引とは、為替レートを現時点で予約する相対のデリバティブ取引で、将来の契約した時点で反対売買して差金決済するのだが、株取引でいえば、人民元の空売りと似た取引である。外貨リスク準備金の引き上げは、機関投資家がこうした取引を行う際に必要なコストを引き上げることを意味する。

 中国本土マスコミによれば、市場関係者は当局がこうした政策を打ち出す理由として、「人民元対ドルレートが6.90付近まで下落しており、さらにもう一段の人民元安圧力がかかっていること、6月下旬以降、中国外貨取引センターの発表する人民元指数(実効レート)が92.41まで下落しており、合理的な範囲とされる94~95から外れていること」(6日、中国証券報)などを挙げている。つまり、中国人民銀行が、為替取引の安定化を図るために行った措置であると説明している。こうした政策が打ち出されている中での人民元安である。

 アメリカは1日、2000億ドル相当の中国からの輸入品に対して、これまで10%の追加関税をかけるとしてきたが、それを25%に引き上げると発表した。意見聴取をかけるとしているので、今後、内容が修正される可能性があるが、政府が方針として追加関税を引き上げた意味は大きい。

 それに対して、中国は3日、外貿法、輸出入関税条例などの法律、国際法の基本原則に基づき、アメリカ原産の5207品目、約600億ドル相当の輸入品について、25%、20%、10%、5%の関税をかけると発表した。中国側もアメリカが態度を変えなければといった条件を付けているが、アメリカが実行すれば必ず報復するという意味でもある。

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