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日産経営陣は「独裁者ゴーン」とこう戦った クーデター全内幕

フランス企業にはならない

 日産側にとって、このタイミングの「Xデー」は大きな意味があった。ゴーン容疑者は日産だけなく、アライアンス(提携)を結ぶ仏ルノーと三菱自動車の経営トップの立場にもあった。ジャーナリストの伊藤博敏氏が言う。

「欧州メディアでは、ゴーン容疑者が『ルノーと日産の経営統合』を計画しており、その実現が“数か月後”に迫っていたと報じられている。ルノーはフランス政府が大株主であり、経営統合は“日産がフランスの企業になる”ことを意味する。そこに日産の経営陣は強く反発したとされる」

 もともとは、日産の経営危機をルノーの出資が救ったわけだが、「V字回復」以降の近年はむしろ“ルノーが日産株の配当で食いつなぐ”という関係に変わった。ゴーン容疑者主導での経営統合に、日産プロパーが反発するのは当然だ。

 そうした情報を元最高幹部である小枝氏にぶつけると、「ルノーと日産の関係は、お互いにメリットがあるから続いてきたもの」としながらも、「これ以上(提携を深める)というのは違う論議。今がちょうどいいバランス」と、“日産はあくまで日本企業”というニュアンスを言外に含めた。

 多くの雇用を創出する大手自動車メーカーは、国の経済を下支えする存在だ。「ルノーの影響力が強まれば、生産拠点をフランスに移すなどの施策が採られる可能性もある」(前出・伊藤氏)のだから、一企業の問題にはとどまらなくなる。

 そうしたなかで、日産経営陣の情報提供をもとに動いたのが東京地検特捜部だ。

「捜査の指揮を執ったのは森本宏・特捜部長。特捜部副部長から法務省刑事局総務課長という“エリートの登竜門”を経験した検察庁のエースです。2010年の大阪地検での証拠改ざん事件以来、検察は冬の時代を迎えていた。ゴーン氏という超大物の逮捕に、刑事司法改革の目玉である司法取引を用いるのだから、『国家秩序を維持する検察』をアピールする絶好の機会となった」(前出・伊藤氏)

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