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孫が介護する“老老老介護”時代 「6ポケット」が「6オムツ」に

「6つのポケット」が「6つのオムツ」に

 Aさんの孫のように家族の介護を行なう15~23歳の若年層の介護者は現在全国で22万5000人に達している。高校生の5.2%が家族の介護を担っているという調査もあり、「ヤングケアラー」と呼ばれる。

 現在のヤングケアラーは「祖父母の介護」や「親の介護」が主な役目だが、近い将来は「祖父母と親のダブル介護」が増加すると予想される。介護者と被介護者が高齢化して介護が立ち行かなくなっている現実の中で、その歪みを押し付けられているのが孫の世代なのだ。介護アドバイザーの横井孝治氏が指摘する。

「介護は被介護者が亡くなるまで終わりがない。祖父母の介護を孫が担う場合、看取ったとしてもその先に親の世話が待っています。早ければ学生のうちから介護に追われて就職や結婚ができない怖れもある。平均寿命が伸びているから、祖父母と親のダブル介護を続けているうちに若者も40代、50代になっていく」

 まさに「3世代にわたる老老老介護」の時代である。少子化で1人の孫が両親、祖父母計6人の面倒を見るケースも想定される。かつてはその6人から経済メリットを享受するという「6つのポケット」で育った世代は、そのかわりに“6人のオムツ”を取り替えることになる。これでは孫の人生は介護に押し潰されてしまう。前出の横井氏が警鐘を鳴らす。

「“祖父母と親の介護に明け暮れているうちに、気付いたら自分の老後が不安な年齢になってしまった”という人が増えると、社会や経済の成長にも悪影響を与えかねません」

 かわいい孫が自分のために苦労する――長寿の先は決して「寿」とは限らない。

※週刊ポスト2018年12月14日号

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