投資

【確定拠出年金】「拠出・運用・給付」3段階で優遇 新制度のメリットを徹底活用

 さらに、金融商品によってコストの違いがある点にも注意したい。確定拠出年金で運用する金融商品には、定期預金もあるが、ほとんどが投資信託(以下、投信)だ。投信を購入すると、実際に運用している金融機関に信託報酬を支払わなければならない。この信託報酬は投信によって異なり、似たような運用内容の投信同士でも差があることは珍しくない。

 実際、国内の代表的な株価指数であるTOPIX(東証株価指数)に連動するインデックス型投信の場合、0.21%のところもあれば、0.62%のところもある。信託報酬は運用金額に応じて徴収されるため、残高が100万円の場合、0.4%の差は4000円の差になる。毎年徴収されるので、この差は無視できない。

 つまり、金融機関選びには、運営管理手数料のコストと金融商品のラインナップという、2つの考慮すべき条件が存在する。そして、厄介なのは、割安なコストと充実したラインナップを両立している金融機関が少ないこと。加入者が拠出する金額や、どういう運用をしたいのかによって、適した金融機関は変わってくる。運用を別の投信に替えたり、金融機関を変更したりすることは可能だが費用が発生してしまう。加入前には、事前の綿密なチェックが不可欠だ。

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手数料を大きく上回る所得控除のメリット

 
 毎年数千円の手数料はかかるが、それで確定拠出年金のメリットが薄れるかといえば、誤りである。税制優遇の効果は〝絶大〟だからだ。

 拠出時の所得控除をみてみよう。例えば、年間の課税対象となる所得が500万円の会社員がいたとする。この会社員が毎月2万円拠出すると年間合計額は24万円。所得税の税率は20%なので、24万円所得控除されれば、所得税は4万8000円(=24万円×20%)軽減されることになる。

 加えて、住民税は10%なので軽減分は2万4000円。したがって、所得税と住民税を合わせて7万2000円が減税されることになる。拠出する金額が1万円でも3万6000円が減税される計算だ。

 課税所得が「195万円超、330万円以下」の会社員は、所得税率は10%となり、毎月2万円の拠出(年間合計24万円)で所得税+住民税の減税分は4万8000円、毎月1万円の拠出(同12万円)では2万4000円となる。数千円のコストを払ってもやる価値は十分にある、といえるだろう。

 手数料以外のデメリットとしては、原則60歳までは資金を引き出せない点。流動性に乏しいといえるが、年金という資金の性格を考えると、簡単に引き出すことができないのは一概にデメリットとはいえないと考えられる。

 また、確定拠出年金の加入者が、企業年金がある企業や公務員になった場合、確定拠出年金の残高を企業年金に移せず、新たな拠出もできないという問題があったが、17年以降は制度改正で移管ができるようになる。

 このようにデメリットは少ないが、加入や移管の手続きが、非常に煩雑である点は改善していくべきだろう。準備する書類の多さ、郵送によるやり取りなど、まったく旧態依然としている。投信のラインナップ拡充も必要だ。最近、信託報酬が割安なものが続々と登場しているが、確定拠出年金の対象になっていない。既存の投信との兼ね合いもあろうが、制度改正で個人型が普及するチャンスを後押しする施策が求められる。

※マネーポスト2016年春号

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