閉じる ×
大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

日本で外国人労働者の受け入れが進まないのはなぜか

外国人労働者の受け入れが進まないのはなぜか(イラスト/井川泰年)

外国人労働者の受け入れが進まないのはなぜか(イラスト/井川泰年)

 外国人労働者を受け入れて労働力不足を補う、と政府は大きな旗振りをし、特定技能を指定して受け入れ拡大を目指したが、現実にはなかなか進まない状況だ。その問題はどこにあるのか、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。

 * * *
 法務省出入国在留管理庁の発表によると、外国人労働者の受け入れを拡大するために新設された「特定技能」の在留資格を得た外国人は11月8日時点で895人に過ぎず、実際に日本で働いている人は9月末時点でたったの219人だった。政府は2019年度に最大で4万7550人の受け入れを見込んでいたが、資格取得者はまだ2%足らずでしかなく、目標には到底届きそうにない。

 改正出入国管理法が4月に施行されてから半年も経っているのに、なぜ受け入れが進んでいないのか?

 問題は、外国人労働者を一括して司る省庁がないことだ。受け入れの窓口は出入国在留管理庁だが、就労(雇用)については厚生労働省の所管である。国家の「人事部」を自任するメンタリティがどこにもなく、対応が中途半端なのだ。

 たとえば、ナニー(母親に代わって子育てをする女性)は世界中から引く手あまたで、その人材獲得は国際的な競争になっている。日本の場合、ナニーは「特定技能」在留資格の対象ではなく、東京、神奈川、大阪などの国家戦略特区だけで「外国人家事支援人材」の雇用を認めているが、日本の女性を育児や家事から解放するためには、日本全国どこでも受け入れられるようにすべきである。

「絵に描いた餅」ばかり

 これまで日本は、人手不足になったら外国人労働者を慌てて呼び込み、不況になったら追い返してきた。たとえば、1980年代のバブル期には日系ブラジル人を大量に受け入れ、バブルが崩壊した途端に解雇した。同じ轍は二度と踏むべきではない。そのためには人数の目標だけ設定するのでなく、きちんとした外国人受け入れ制度を作らねばならないのだ。いくら枠組みを作っても、それを担保していく仕掛けがなければ、優秀な外国人労働者が定着するわけがない。

関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。