田代尚機のチャイナ・リサーチ

バブルを抑制すべきか維持すべきか 米中で対照的な金融政策

米中の株価のどちらが割高か

 1月11日のNYダウ終値は89ドルほど下げたものの、前週末までは4日続伸、過去最高値を更新した。

 足下のファンダメンタルズという点では、米中の差は明らかだ。今も新型コロナ禍で苦しむアメリカでは、2020年の成長率は▲4%強となりそうだ。一方、中国では一部の地域で再流行が見られるものの規模は限定的であり、今のところ経済への影響は見られない。2020年の成長率は2%程度となりそうだ。少し古くなったが10月に行われたIMF(国際通貨基金)の経済見通しによれば、2021年のアメリカの成長率は3.1%であるのに対して中国は8.2%である。

 アメリカでは新型コロナウイルスのワクチンへの期待が高いが、変異種の存在もあり、効果は未知数である。一方、バイデン政権発足後、新型コロナ対策として多額な財政支出は必至である。状況次第では、都市封鎖も含め経済に影響が出るほどの厳しい行動規制などが課せられる可能性すらある。

 財政状況のさらなる悪化に人為的な理由による景気の減速といった組み合わせは、債券の買い手を委縮させ、質の悪い金利の上昇を引き起こしかねない。

 アメリカでは1月6日、次期大統領の正式認定を行う議事堂に現大統領を支持する者が乱入して4名の死者を出す事件が起きたばかりである。現在、現職大統領に対する弾劾手続きが行われようとしている。

 社会の分断が一層深刻になり、社会情勢が不安定になる中で株価が上昇している。株式を保有する富裕層の資産は増え続け、新型コロナ禍に苦しみ、株式など買っている余裕のない庶民との格差はさらに広がる。

 NYダウ採用銘柄(30銘柄)平均(11日現在)のPERは31倍である。時価総額の大きな50銘柄で構成される上海50指数は14倍である。米中の成長率、経済情勢、社会情勢などをも考え合わせれば、どちらの株価が割高であるかは明らかではないだろうか。

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