田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国金融行政トップが「アメリカのバブル崩壊」を警戒するワケ

 アメリカ上院議会は3月6日、1兆9000億ドル規模の経済対策法案を通過させた。9日には下院議会で審議が行われ、その後正式に成立する見込みである。高額所得者を除くほとんどの国民に対して一人当たり最大1400ドルの給付金が支払われる。

 今後、消費が刺激されることになるだろうが、それによって中国からの輸入がまた増えるのではないだろうか。

 中国銀行保険監督管理委員会の郭樹清主席は3月2日、国務院新聞弁公室が開催した「銀行・保険業の質の高い発展推進」に関する報告会において、金融行政全般について講演を行った。その中で、海外市場について厳しい現状認識を披露している。

「我が国は金融リスクの解除を巡る戦いについて決定的な成果を得た。しかし、現在の欧米金融市場は実体経済と大きく乖離した状態にあり、金融資産バブルが破裂するのを心配している」

 中国は全人代を通じて、財政政策はやや緊縮側に、金融政策は中立側に戻す政策方針を示している。景気は今後も自律回復すると当局はみており、コロナ対策のために行った景気刺激策からの脱却、政策の正常化を進めるようだ。

 アメリカは中国よりも財政状況が悪い。財源を国債発行に頼らざるをえず、また、その消化にはFRB(連邦準備制度理事会)の力を必要としており、インフレのリスクも大きい。長期金利の上昇が続けば、バブル崩壊に繋がりかねない。

 中国金融行政のトップの眼から見れば、今回の給付金支給は過剰に映るようで、アメリカ市場は危なっかしく見えているのではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。

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