真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

ソニー、日立、任天堂… コロナ禍でも業績好調の企業に共通する姿勢

「イノベーション」とは単なる「技術革新」ではない

 そうした状況から脱却できるヒントはどこにあるのか。コロナ禍でも好調な企業を見ていくと、そこには「ビジネスモデルの転換」に踏み切れたという共通項がある。

 2021年3月期決算(連結)で創業以来初となる1兆円超の最終利益を叩き出したソニーは、半導体の一種でデジタル化に欠かせない画像センサーに加え、ゲーム、音楽、映画といった人々の欲求に応えるモノやサービスを次々に送り出せる業態へと変化させている。

 一時は“沈む巨艦”と揶揄された日立製作所も、家電や重電などハードを中心としたビジネスモデルから脱却。かつてグループの「御三家」と言われた日立化成、日立金属、日立電線(2013年に日立金属に吸収合併)にしても、既に日立化成は売却し、日立金属の売却も発表するなどグループ再編を加速し、ITを活用したソフト中心のビジネスモデルへと大転換している。

 ビジネスモデルの変化を次々と遂げてきた会社のひとつとして、任天堂も注目しておきたい。かつて花札やトランプを手がけてきた任天堂は、1980年代にいち早く時代の変化を捉え、1980年には携帯型ゲーム機「ゲーム&ウォッチ」、1983年には家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売し、世界的なゲームメーカーに業態転換を遂げた。その後、他社も追随するなかで、2017年には「Nintendo Switch」を世に送り出し世界的なヒットとなった。コロナ禍の巣ごもり需要で『あつまれ どうぶつの森』などのゲームソフトが大ヒットし、2021年3月期の純利益は4803億円と前期比で85.7%も増加させたのだ。

 こうした絶好調な企業に共通するのは、強烈な危機感を持って勇敢に変革を先取りする姿勢ではないだろうか。任天堂は時代に応じた新たな娯楽のあり方を生み出してきた。日立はリーマンショック後の2009年3月期に7873億円の最終赤字に転落したことで、変革に踏み切った。ソニーもかつて失いかけた、この世にないモノをつくる“ソニーらしさ”を取り戻しているように見える。

 コロナ禍で苦しい今だからこそ、「本当にダメだ」という危機感を募らせ、変革をいとわないことが、むしろ脱却のヒントになるのではないか。

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