大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

「天神ビッグバン」も堅調 インバウンド抜きでも強い九州の「明るさ」

九州の経済が活性化している背景は(イラスト/井川泰年)

九州の経済が活性化している背景は(イラスト/井川泰年)

 コロナ禍で外国人の訪日が制限されたことで、かつてインバウンドに沸いていた観光地は大きなダメージを受けている。しかし一方で、福岡をはじめとする九州は驚くほど活気にあふれているという。九州でいったい何が起きているのか、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。

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 私は毎月、企業の経営課題を研究する「向研会」で東京、名古屋、大阪、福岡の経営者と交流している。その中で、いま元気なのは福岡だ。新型コロナウイルス禍で、以前は怒涛の如く押し寄せていたインバウンド(訪日外国人旅行)がなくなって意気消沈しているかと思いきや、驚くほど活気にあふれている。

 その象徴が、商業の中心地・天神エリアで進行中の大規模な再開発プロジェクト「天神ビッグバン」だ。福岡市のホームページによると「国家戦略特区による航空法高さ制限の特例承認や独自の容積率緩和制度などを組み合わせて、耐震性の高い先進的なビルへの建て替えを促進し、アジアの拠点都市としての役割・機能を高めて新たな空間と雇用を創出する」ことを目指している。

 ビルの建て替えは52棟に達し、たとえば9月に竣工した規制緩和第1号案件の天神ビジネスセンターには、通信販売「ジャパネットたかた」を運営するジャパネットホールディングスが東京の主要機能12部門を移したほか、グーグルの開発拠点やNECの九州本部機能、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)など約30社が入居したという。

「天神ビッグバン」の波及効果で、福岡は不動産価格が堅調だ。ビルディンググループの調査によると、オフィスビルの10月の推定成約賃料(1坪あたり)は、名古屋と大阪の1万3000円台に対し、福岡は1万5000円台となっている。

 あるいは、開業10周年を迎えたJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」は「博多阪急」を核店舗として2011年のオープンから7年連続で売上高を伸ばし、新型コロナ禍の中でも健闘している。さらに最上階の10階と9階にある会議室は、九州地区の支店長会議などでいつも埋まっている。

 新型コロナ禍で青息吐息の地方都市が多いのに、なぜ福岡は元気なのか? その理由の一つは、経済人の明るさだと思う。たとえば、福岡向研会の会員で麻生セメント会長、九州経済連合会名誉会長の麻生泰氏(麻生太郎元首相の弟)は「福岡に来たら景気の悪い話はしないでください」と言う。福岡向研会は他の会員たちもメンタリティが前向きで、暗い話は耳にしない。

 また、彼らがよく言うのは、高島宗一郎福岡市長と服部誠太郎福岡県知事の存在である。高島市長は地元テレビ局のアナウンサー出身で、2010年に就任した。服部知事は今年4月に就任したばかりだが、中央省庁からの“天下り”だった過去の知事たちと異なり、生え抜きの県職員出身だ。2人とも威張らないし、経済界の要望や提案にすぐ対応してくれるから、連携が取りやすくてビジネスがやりやすいということで、経営者たちの間で評判がすこぶる良いのである。

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