マネー

介護施設入居直前になっても自宅にしがみつきたい93才母の本音

介護施設への入居直前に何があった?(イメージ)

介護施設への入居直前に何があった?(イメージ)

 体当たり企画などを得意とする『女性セブン』の名物ライター、“オバ記者”こと野原広子さんは、93才の母親を介護を続けている。施設に入ることとなった母親とオバ記者はどう向き合うのか。オバ記者がリアルな苦悩を綴る。

 * * *
「見た? すごかったねぇ。私、完璧な歌声に泣いたよ」

 友達が朝から電話で大興奮。何かと思えば、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK)で、物語の鍵となる曲『オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート』を歌った世良公則(66才)のことよ。

「彼、2才年上なんだよね」

「てことは、郷ひろみと一緒? 中学1年のときに見た3年生ってまさに大先輩。すごく大人に見えたけど、その世代が60過ぎたいまも頑張っていると思うと」うんぬん。

 なるほどたしかに、ちょっと上の世代が現役バリバリでいてくれると、どれほど励まされるかわからない。

 それはそうと、ドラマの中で何度も出てくる「日なたの道を歩く」というセリフを、つい先日まで茨城の実家に帰っていた私は、93才の母親と聞いていたの。母はといえば、私の作った煮物から納豆、めかぶ、漬物まで、全部ご飯茶碗に入れてぐちゃぐちゃにかき混ぜて、無言で食べている。母は大腸に持病があって、大便をどんどん出す薬を服用しているから、朝食の間も目が離せない。

「ん?」と箸が止まるや車椅子から立ち上がり、ポータブルトイレで用を足そうとするのを、私は寸分の遅れもなく介助する。母は無事にコトが済むと、何事もなかったようにまた朝食を続けるけれど、私は「かなわねえなぁ」と毎回ガックリと疲れて、小一時間くらい、自分の食事を用意する気になれない。そのときに、人が「日なたの道を歩く」とはどういうことか考えたの。

 4か月前、母の「危篤」を知らされた私は、看取りのために帰省した。一命をとりとめた後、せめて最期は、と自宅介護を始めた。ご飯を作り、母の口に運んだ。幸い母の体調は徐々に回復し、体を起こして、ポータブルトイレで用を足せるようになった。ひとりの人間にここまで密着して生活したことは、64年生きてきて初めてだ。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。