大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

2023年度の発足を目指す「こども家庭庁」“戸籍本位”の政策の問題点

 一方、日本は婚外子の割合がわずか2.3%(2019年)で、合計特殊出生率は1.34(2020年)と5年連続で低下した。

 さらに、今回の18歳以下への10万円給付では、児童手当の登録口座が振込先となるため、昨年9月以降の離婚に伴う養育者側への口座変更が反映されず、親権を持たない(子育てをしていない)側に給付されたケースもあるというお粗末な状況になっている。そうした問題の元凶が明治時代以来の戸籍制度である。

 したがって、こども家庭庁は「子供省」に衣替えし、従来の「親」や「世帯」ではなく、「子供」を基本にした全く新たな政策を打ち出すべきだと思う。

 たとえば、シングルマザー・ファーザーであれ、事実婚であれ、同性婚カップルであれ、養子縁組制度や里親制度なども含め、すべて子供を基本としたコンセプトにガラリと転換しなければならない。

 そのようにして21世紀の“新しい家庭”や“新しい保護者像”を明確に定義すれば、当然、戸籍制度は撤廃し、マイナンバー制度も新たな国民データベース(DB)にゼロから作り直すことになる。

 また、日本の場合、「子供」の定義は法律によってまちまちだが、子供省の対象は「18歳までの者」ではなく、女性が受胎した時点から小学校就学前の6歳までにする。そして、その約7年間を保護者が健全に養育できるようにすることを子供省の(目的ではなく)責任にすべきだと思う。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2022~23』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『稼ぎ続ける力 「定年消滅」時代の新しい仕事論』等、著書多数。

※週刊ポスト2022年2月4日号

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