東京でも徐々に人気に(写真は『蓬莱春』の「自家製玉子皮春巻」)
外はサクッと、中はトロッとうまみたっぷり。お弁当のおかずからビールのお供まで、老若男女に愛される、中華料理の春巻き。最近はベトナム料理を由来とする「生春巻き」も一般的になりつつあるが、食卓に馴染みがあるのはやはり、茶色い揚げ春巻きではないだろうか。そうした中で近年、関西の一部地域で食べられてきた「黄色い玉子春巻き」が、東京にも進出しつつあるという。
玉子春巻きとは何なのかを説明する前に、まずは一般に食べられる春巻きの概要をおさらいしておこう。『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』などの著書があるライターの下関マグロ氏が解説する。
「点心料理として生まれた春巻きは、飲茶のお供としておつまみ感覚で食べられるもので、そのスタイルのまま日本の中華料理店でも定着しました。春巻きが奥ゆかしいのは、とにかく『メインになることのない料理』であること。最近は春巻き専門店などもありますが、食べ歩き用のテイクアウトが中心。『春巻き弁当』も鶏の唐揚げがメインでドーンと入っていたりする。中華料理店に行っても『餃子定食』はあっても『春巻き定食』はあまりないし、そもそも一人だとなかなか単品で頼まないですよね。
でも、春巻きには個性が出るんですよ。具材もシュウマイのタネのような肉々しいものからロシア料理のピロシキのようなものまで様々。食べる時も酢醤油はもちろん、塩で食べる人もいれば『俺はケチャップで食べるんだ』という人もいます」
そんな春巻きだが、実は地域によって大きな違いがある。春巻きの「皮」が違うのだ。
「私も関西に住んだことがありながら当時は食べたことがなかったのですが、大阪・神戸の一部地域では、通常の春巻きの皮の代わりに薄焼き玉子を使用する『玉子春巻き』がメジャーなんです。クレープのように薄くのばした薄焼き玉子で事前に炒めた具材を包み、天ぷらの様に薄く小麦粉をまぶすか、あるいはそのままの状態で揚げ焼きにする。通常の皮よりも厚みがあるため食感も『パリッサクッ』ではなく、『フニョッ』という感じです」