中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

メーカーが値上げしても「うまい棒を10円で売り続ける」駄菓子店店主の思い

最近は200円の「目玉グミ」の売れ行きが好調だという

最近は200円の「目玉グミ」の売れ行きが好調だという

売れ行き好調な200円の「目玉グミ」

 これだけ聞くと、「からつだがし屋さん」の売上が減ってしまうのではないか、と感じるかもしれませんが、そんなことはないのだといいます。元々、井上さんは駄菓子の卸問屋を経営しており、店舗で売っているのはあくまでその一部。卸業と小売業の両方を回して利益をあげている。井上さんはこう続けます。

「駄菓子の購入量は実は増えています。大人にとっても昔懐かしいお菓子ですし、家での癒やし目的で買ってくださる人もいます。さらには、おもちゃや各種グッズもよく売れているのです。プチプチと潰していくグッズやら、紙風船などがよく売れています。そうしたものと合わせれば、うまい棒を10円で売ってもなんとかなります」

 駄菓子屋の儲けは、通常は卸値である20%となるが、「からつだがし屋さん」ではうまい棒を卸値の10円で売っているため、そこに儲けはない。これについては「そのぐらいならOKです。むしろ、最近は200円の『目玉グミ』(写真参照)がよく売れています。だから、うまい棒は象徴的ではあるものの、他を売ればなんとかなります」と語ります。

 そのうえで、井上さんは「今、うまい棒を10円で売ることにより、『この店は安いんだね』とこれからお客さんが増えてくれるかもしれない。それを見越した上でやっていますよ」と言うのです。そこにはちゃんと商売上の勝算も垣間見えました。

 ちなみに駄菓子メーカーの「やおきん」は、今回のうまい棒の値上げについて「未来の子どもたちにも、これからも駄菓子のおいしさを届けていくために。ちゃんと利益を出すことで、駄菓子文化の存続と発展に努めていきたい。やおきんの、2円分の決意です」と声明を出しています。反対に井上さんがうまい棒を10円で売り続けるのも、同じく「駄菓子文化の存続と発展のため」、そして子供たちのためという側面があるのでしょう。

今も同店の「10円コーナー」に並ぶうまい棒

今も同店の「10円コーナー」に並ぶうまい棒

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』(小学館新書)。

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