中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

メーカーが値上げしても「うまい棒を10円で売り続ける」駄菓子店店主の思い

同店の「大人買いコーナー」では本来360円の30本入りのうまい棒が300円で販売されている

同店の「大人買いコーナー」では本来360円の30本入りのうまい棒が300円で販売されている

 駄菓子店の「10円」の象徴ともいえる「うまい棒」の希望小売価格(税別)が、4月1日から「12円」へと値上げされた。駄菓子メーカーの「やおきん」が値上げを発表したところ、ファンからは「なくなっちゃうほうが悲しいから」と、値上げに理解を示す声が多数寄せられたという。その一方で、駄菓子店の中には「うまい棒だけは値上げできない」と、いまだに10円で販売し続けているところもあるようだ。「うまい棒10円」にこだわる駄菓子店店主の考えを、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が聞いた。

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 佐賀県唐津市に「からつだがし屋さん」を構える「せいちゃん」こと井上誠二社長は、うまい棒の希望小売価格の値上げが発表された直後から、「ウチは税込みで10円のまま売り続けます」と宣言していました。その理由は、駄菓子屋での買い物というものは、「10円単位」にすることにより、計算がしやすく、さらには子供たちが決められた予算の中で買い物を終えるための良いトレーニングになると感じているから。

 他の商品はすべて10円・20円・30円・40円といった価格の中、うまい棒だけ12円にしてしまうと、店の経営の原理原則が崩れてしまいます。そういった理由もあり、井上さんは「10円で行く」と宣言をしていたのです。

 実際、4月に店を訪れると、相変わらずうまい棒は10円で売っていますし、30本入りの「大人買いコーナー」では300円で売っている(どちらも税込み)。なぜ、うまい棒の価格を10円に維持することを重視しているのでしょうか。井上さんはこう語ります。

「うまい棒は昔からよく売れている人気商品です。希望小売価格12円+税のところを私の店では税込み10円で売っているわけですから、当然、利益率は減っています。一方で、うまい棒ばかりが注目されていますが、それ以外の駄菓子の中にも希望小売価格が値上げされたものがあります。実際、ウチでも値上げせざるを得なかったものはあります。ただ、うまい棒を12円で売るわけにはいかない。

 なぜかといえば、元々子供たちは10円単位での買い物をしており、そしていくらまで、という制限があったうえで店に来ているわけで、簡単に子供たちの設定を変えられないわけですよ。子供たちがお小遣いの中でやりくりしてうまい棒を買っている姿をずっと見てきたわけだから、私はこれからも10円でうまい棒を売っていこうと思います」

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