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ロシアへの経済制裁の“抜け道”となっていた、イスラエルとロシア正教会の関係

 今や国家権力の中枢に位置するロシア正教会だが、その歩んだ道のりは平坦ではない。15世紀に東方正教会から独立して以降、ロマノフ朝の前期(17世紀半ばまで)はツァーリ(皇帝)をも譲歩をさせる存在だったが、ピョートル1世(在位1682〜1725年)による改革を経て、ロマノフ朝が滅亡するまでの200年間は独立と自治権を失い、国家権力への従属を余儀なくされた。

 神と宗教を否定した共産主義国家ソビエト連邦(ソ連)のもとでは、従属どころか完全なる冬の時代を耐えねばならなかったが、1985年のゴルバチョフ政権成立とともに雪解けが始まる。その後、ソ連の解体とエリツィン時代を経て、第1次プーチン政権が成立した2000年頃にはみごと復活。財政難のロシア政府に社会的弱者を救済する余力がない状況下、ロシア正教会は困窮者への給食サービスを続けた。

イスラエルのロシア系ユダヤ人

 2010年の統計によれば、信者の総数は9000万人。世界最大の独立正教会組織として知られ、その財源は信者からの寄進が基本だ。ロシア正教会の財力を考える上では、大口の寄進者と思われるオリガルヒ(新興財閥)に加え、国外に散在するロシア人コミュニティーも無視できない。なかでも最大のコミュニティーは中東のイスラエルに存在する。

 1980年代以前、イスラエルに居住するロシア系住民は少数の聖職者に限られた。それがソ連末期になり出国規制が大きく緩められると、「ユダヤ人」としてイスラエルへ移住する人びとが続出。その数はわずか数年で100万人にも達した(臼杵陽『イスラエル』岩波新書)。

 イスラエル政府は受け入れる移民をユダヤ人に限り、1970年改訂の帰還法(国外のユダヤ教徒がイスラエルに移民することを認めるイスラエルの法律)では、ユダヤ人について、「ユダヤ人の母親から生まれた人、あるいはユダヤ教に改宗した人で、ほかの宗教に帰依していない者」と定義していた。

 しかし、ロシアからの移民の半数以上は非ユダヤ人との指摘がある。仲介業者からユダヤ人証明者を購入することで、イスラエルの土を踏んだ者が多いという(『フォーサイト』2001年10月号 池内恵「“ユダヤ人”とは名ばかりのイスラエルへの移民」)。

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