田代尚機のチャイナ・リサーチ

半導体不足はまだら模様、電子製品向けは需要急減 TSMCの株価も下落続く

世界最大の半導体受託メーカー・TSMCの株価の下落トレンドが続いている(Getty Images)

世界最大の半導体受託メーカー・TSMCの株価の下落トレンドが続いている(Getty Images)

 深刻だと言われていた半導体不足の現状はどうなっているのか。それを見通す上でのヒントとなるのが、世界最大の半導体受託メーカーであるTSMC(TSM、ニューヨーク証券取引所上場)の株価推移だ。今年に入ってから、株価の下落トレンドが続いている。

 過去最高値は今年1月13日の場中で記録した145ドル。7月1日は前日比5.8%下落し、77ドルで引けており、最高値からの下落率は47%に達している。マーケット全体が大きく下げる中で売られてしまうのは仕方のないことかもしれないが、それを考慮しても高値から半値近い下落は異常だ。ファンダメンタルズの悪化を意識せざるをえない。

 最高値を更新した年初あたりまでは、“新型コロナ禍が収束し、消費が回復、サプライチェーンは早晩、正常化するだろう。イノベーションの進展により構造的に半導体需要は伸びるはずだ”との予想が優勢であった。しかし、その後はそうしたポジティブな見通しが徐々に後退、6月に入ると米国が速いペースでの利上げを余儀なくされる見通しが強まり、“グローバルで景気が悪化するのではないか、半導体需給は緩むのではないか”といった懸念が高まり、売り圧力が増している。

 こうした見方を裏付けるような情報も出てきた。台湾メディア(電子時報)は7月1日、TSMCの三大顧客が発注量を一斉に引き下げたと報じている。

 アップルはiPhone 14シリーズの量産を既に始めているが、当初1億台としていた出荷目標を1割削減、9000万台とした。AMD、NVIDIAは、PCやブロックチェーン・マイニングなどの需要急減から、発注の調整を余儀なくされた。AMDでは今年第4四半期から来年第1四半期にかけて、7nmおよび6nmプロセス製造の半導体、2万チップ分の発注を削減、NVIDIAでは発注時期を遅らせるとともに、2023年第1四半期の発注量を削減した。

 自動車向けの半導体不足は依然として深刻なようだが、ボリュームの大きい電子製品向けについては、雲行きが怪しくなっている。

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