田代尚機のチャイナ・リサーチ

半導体不足はまだら模様、電子製品向けは需要急減 TSMCの株価も下落続く

数十年に一度の変動の時期か

 景気減速懸念による市場への影響は農作物先物指数にもはっきりと表れている。シカゴ小麦先物価格(直近限月)は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で2月下旬から3月上旬にかけて8割を超す上昇となった。その後、上げ下げがあったが、5月中旬に戻り高値を付けた後は急落、7月に入るとほぼ2月下旬の水準まで戻している。

 ロシア、ウクライナからの農産物の輸出が滞る影響は現在も残るものの、グローバルで農産物が豊作であり、また、他の地域からの補充もうまくいっている。供給面での不安が薄らいでいる上に、米国を中心に各国がインフレ対策として金融引き締めを急いでおり、世界景気が急減速する懸念が高まっている。需給両面から小麦先物価格は急落している。

 ウクライナ危機に伴うエネルギーやコモディティ価格の上昇や、中国のゼロコロナ政策に伴う工業用品価格の上昇など、供給側の要因で起きたインフレは、世界全体で吸収することで、ある程度緩和される可能性がある。一方、グローバルで進む金融引き締め政策は景気をオーバーキルさせてしまい需要を必要以上に委縮させてしまう懸念もある。

 こうした状況下で、株式市場、為替市場の値動きを予測することは、いつもにも増して難易度が上がっている。グローバル経済は数十年に一度の変動の大きい時期にあるのかもしれない。

 短期間にここまで大きく下がったのだから、株は逆張り、為替は円高反転に期待する投資家も出てくるかもしれない。ボラティリティが高いということは、逆に考えれば期待されるリターンも大きいと捉えられるが、将来の予測が難しい時期だけに、くれぐれも資金管理は厳重にしてほしい。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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