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サンマ初競りは「1匹1万円」の異常事態 ニッポンの食卓から「庶民の魚」が消える日

もはや高級魚になりつつあるサンマ(写真:イメージマート)

もはや高級魚になりつつあるサンマ(写真:イメージマート)

 7月中旬、北海道釧路市の卸売市場でサンマの初競りが行なわれた。わずか24匹の水揚げで、競りにかけられたのは10匹。小樽市内の鮮魚店が「1匹約1万円」で競り落としたという。ご祝儀相場とは言え、「庶民の魚」に1万円の値が付く異常事態だ。

 東海大学海洋学部の山田吉彦教授が話す。

「サンマの漁獲量減は、気候変動と海外需要の高まりが大きな要因です。特に、北海道近海では海水温上昇が続き、根室から500㎞以上離れた公海まで出なければサンマの群れに出会えなくなった。燃料代高騰やロシアによる拿捕のリスクもあり、今後はサンマ漁に出る業者も減少すると思われます」

 山田教授は、今後もサンマの漁獲量は減り続け、値上がりは避けられないと指摘する。

「ひと昔前は、秋になれば脂ののったサンマが1匹100円程度で買えましたが、すでに庶民の口に入らない高級魚になりつつあります。今や200g以上のサンマはほとんど見かけない。獲れても高級料亭などに高値で卸され、スーパーの鮮魚コーナーなどでは目にすることがなくなるでしょう」

 サンマだけではない。「近年、あらゆる魚の調達が困難になっている」と話すのは、水産業界紙『みなと新聞』の杉田和也記者だ。

「国内漁獲量の減少に加え、欧米諸国や中国における魚の消費が高まり、日本の業者が提示する価格が通りにくくなっている。つまり『買い負け』が顕著になっているのです。たとえば白身魚の『メロ』など、かつて日本のスーパーで売られていた魚も他国に流れてしまい、国内ではほとんど見かけなくなってしまいました」

 諸外国における魚食ブーム、ウクライナ危機など国際情勢の変化で、回転寿司の「定番ネタ」であるサーモンの流通にも異変が起きている。水産アナリストで貿易会社「タンゴネロ」代表の小平桃郎氏が指摘する。

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