田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本が世界の最先端だったナトリウムイオン電池開発 中国で2024年にも量産化の見通し

世界的なリチウム電池材料の価格高騰でナトリウムイオン電池への注目度が高まっている(Getty Images)

世界的なリチウム電池材料の価格高騰でナトリウムイオン電池への注目度が高まっている(Getty Images)

 中国では今、化石燃料自動車から新エネルギー自動車への代替が急速に進んでいる。9月の新エネルギー自動車の販売台数をみると、70万8000台で前年同期比で93.9%増加、自動車販売全体に占める割合は27.1%に達している。

 5月に入り、中国政府は新エネルギー自動車を中心とした総合的な消費促進政策を立て続けに打ち出しているが、新興の電気自動車専業メーカーは生き残りをかけて全力で生産能力の拡大を図り、大手自動車メーカーは新エネルギー自動車への生産切り替えを急いでいる。

 こうした新しい製品の生産急拡大局面では、製造工程の最も弱い部分に需給逼迫が起こり易いが、新エネルギー自動車の場合には、リチウム電池、とりわけ正極に使われる炭酸リチウムの不足が顕著であり、価格が急騰している。たとえば、上海鋼聯データによれば10月14日現在、中国国内向け電池用炭酸リチウムの市場価格(平均)は53万1500元/トンで、国慶節休場前と比べ2.7%上昇、今年に入ってから8割近い上昇率である。

 もう少し詳しく調べてみると、中国はリチウム鉱石の生産量も多いが、その精製工程はほぼ中国に集中しているような状況だ。その中国で、採鉱、精製がともに需要の拡大に追い付かず、世界的にリチウム電池材料の高騰を引き起こしている。問題の根は深く、この先、炭酸リチウム不足は長引きそうである。

 こうした状況で、中国の電池メーカーは早くもリチウム電池に代わる次世代製品の開発に注力しており、ナトリウム電池の開発を加速させている。

 大手リチウム電池メーカーの寧徳時代(CATL)をはじめ、華陽股フェン、伝技科技などの電池メーカーから、関連の材料メーカーまで、関連各社が次世代電池の開発に向けて一段となって大型投資を始めている。

 ナトリウム電池には、安全性が高いこと、コストが安いこと、急速充電の面で優れていることに加え、リチウムイオン電池の製造装置を利用できるので新たな設備投資が抑えられることなど、多くのメリットがある。

 一方、エネルギー密度が低いといった欠点があり、更に、本来持つ安全性、低コストといった特徴を引き出すためには、まだ、多くの点で研究開発が必要だ。

 ただ、リチウムイオン電池で既に世界のトップクラスの生産能力、技術を持つ寧徳時代は、2023年中にはこれを実用化すると発表している。もし、実現すれば世界初である。業界内では2024年には本格的な量産化が始まるのではないかといった見方さえある。

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