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岸田首相が「新しい資本主義」で脱却目指す「新自由主義」とは何か? 「市場を信頼する」是非を考える

「新しい資本主義」を目指すというが…(時事通信フォト)

「新しい資本主義」を目指すというが…(時事通信フォト)

 2023年度予算編成の基本方針が閣議決定された。防衛力の抜本的強化が明記されたほか、物価高対応など「経済再生」を最優先にした財政出動が見込まれる。その歳出項目の一角を占めるのが、岸田文雄・首相の掲げる「新しい資本主義」の推進である。岸田首相は新自由主義的な経済政策を改め「成長と分配の好循環」を目指しているが、そこで注目したいのが、これまで新自由主義を理論的に支えてきた「経済学」だ。その目的とは何だったのか、これからどうあるべきかなどについて、金融・経済を題材にした小説『エアー2.0』『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』などを手がけてきた小説家・榎本憲男氏が考察する。

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 岸田文雄内閣総理大臣は「新自由主義からの脱却」を宣言している。首相官邸のホームページに行くと、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」というPDFをダウンロードすることができる。冒頭には「資本主義のバージョンアップに向けて」とある。小説『エアー2.0』で「資本主義をやりなおす」と主人公に言わせ、続編『エアー3.0』のテーマは「資本主義をやり直し、民主主義を鍛え直す」ことだと肝に銘じて構想を着手しはじめた僕は、思わず「おお」と声をあげた。さらに読み進めると、次のような文言がある。

〈1980年代から2000年代にかけて…「新自由主義」と呼ばれる考え方が台頭し…世界経済が大きく成長した…一方で、経済的格差の拡大…等による多くの弊害も生んだ〉

 では、岸田内閣が「多くの弊害」を取り除き、「資本主義のバージョンアップ」のために脱却を目論んでいる新自由主義とはいったいどんなものだろう?

 新自由主義とは、僕に言わせれば、主流派経済学(古典派・新古典派)の“信念”である。どのような信念か。経済成長を実現するためには、市場原理を最大に活かしたほうがいいと信じて疑わない心だ。では、その市場原理を最大に活かすためにはなにをすればいいというのか? なにもするな、が答えとなる。政府が手出しをすると、かえって市場効率を阻害して碌なことにならないというわけだ。

 つまり、以前、別の記事(マネーポストWEB掲載〈「どうして誰もわからなかったの?」英女王がリーマン危機直後に経済学者に向けた疑問とその回答〉)でも書いた「ほったらかしがよい、いろいろあるけどやがて市場は落ち着くべきところ(均衡)に落ち着く」という考え方と合致する。

 ということは、新自由主義は以下のような主張とよく馴染む。

「小さな政府」……とにかく政府はほとんどやることがないのだから小さくてよい
「規制緩和」……規制というのは下手な手出しだと考える
「民営化」……政府は小さいほどいいのだから贅肉はどんどん落として、市場に任せよう
「自己責任」……自由競争で負けたのは個人の責任だ

 このような考え方を発展させていけば、世の中が弱肉強食の殺伐としたものになるのはまちがいない。

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