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本当に金融緩和から脱却するのか? 日銀・黒田総裁の金融政策修正の本当の意味

イールドカーブ・コントロールをより強化している

 確かに長期金利は若干上昇することになりますが、それは例えば、ブレークイーブンインフレ率(物価連動国債の売買参加者が予測する今後最大10年間の年平均物価上昇率)が0.85%前後で推移していることなどからも、本来ならば長期金利は例えば1.0%前後となっているのかもしれません。

 ところが、実際には金利の上昇が景気に悪影響を与えないように日本銀行が長期・短期の金利を低く抑えている。それがイールドカーブ・コントロールです。上記の例で言えば、放っておけば1.0%程度まで上昇しているはずの長期金利を0.25%に抑えていたのがこれまでの政策でした。それに対し、今回の措置は、イールドカーブ・コントロールの機能は保持したまま、市場機能を回復させるために実態に歩み寄って少し許容幅を引き上げた形なのではないかと思います。むしろ、国債買入れ額を増やしていることから、イールドカーブ・コントロールをより強化(円滑に運用)している側面も覗えます。

 実際のところ、長期金利が0.25%程度上昇しても経済に与える影響は小さいと思います。また、政策金利についても2023年にマイナス金利は修正されるかもしれませんが(仮にマイナス金利がゼロに引き上げられても経済に悪影響はあまり出ないものと思われます)、プラス方向への利上げまであるかというと、その可能性は小さいと考えます。つまり、2023年までを見通すと、今回の修正を原因として日本経済が悪化していくことはないと見ています。

 むしろ、現状を考えれば、今回の修正によって、為替が円高方向へ動いていることから、輸入物価の上昇が抑えられる点では、プラスの影響もあるでしょう。株式市場でも金利上昇の恩恵を被る銀行株や保険株は大きく上昇しています。

 このように考えていくと、今回の修正発表後の株価急落はやや投機的な動きであり、目先は市場が日本の金利上昇を予想して、更なる投機的な動きに繋がっていく可能性はあるかもしれません。ただ、中長期的にみれば、今回の修正による株式市場への影響は軽微なものといえそうです。もちろん、それ以外の理由によって日本株が下落する可能性はありますが、日経平均株価はここから大きく下がるというよりも、上下動しながらも4月に向けて2万7500円程度は見込めるのではないでしょうか。為替も4月に向けて1ドル=135円程度で推移していくのではないかとみています。

【プロフィール】
戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。

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