森口亮「まるわかり市況分析」

米株式市場は調整局面に 「金融引き締めの出口」の鍵を握る3月雇用統計・CPIへの注目高まる

2月上旬の会見では「ディスインフレ」という発言が注目されたパウエルFRB議長(EPA=時事)

2月上旬の会見では「ディスインフレ」という発言が注目されたパウエルFRB議長(EPA=時事)

 1月は好調に推移していた米国株式市場だが、2月に入ってからは高値を超えることができなくなり、調整局面に入っている。この相場の動きはどこから生じているのか。個人投資家・投資系YouTuberの森口亮さんが、米国の金融政策と株式市場の行方を左右する指標の注目ポイントを解説する。

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 2023年2月現在、米株式市場で最も注目されているのは、「金融引き締めの出口」についてです。そもそも株式市場が好調に推移するきっかけとなったのは昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げ幅が前回会合(11月)の0.75%から0.5%に縮小されたことです。それによって、「2023年には利上げを停止するのではないか?」との期待が生まれました。一部報道には「2023年後半の利下げ」を報じるものもあり、それらが期待となって株式市場に先行して織り込まれた結果が、1月の株高の原因だと思われます。

 そして、今年2月におこなわれたFOMCではさらに利上げ幅が縮小。FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「ディスインフレ(インフレ沈静化)」に繰り返し言及し、利上げ停止への期待感がより高まりました。

 市場の関心事は、「あと何回利上げが必要なのか?」「何%まで利上げを行うのか?」ということ。これらがいつも議論の的となっており、「金融引き締めの出口」を探る報道が目立つようになりました。

予想を大きく超えた雇用統計

 毎月第1金曜日に発表される雇用統計は、FRBによる金融政策の方向性を探る上で大きな意味を持っています。その中で今月3日に発表された雇用統計は、サプライズとなる結果でした。1月の非農業部門雇用者数が市場予想(18.5万人増)を大きく上回る、51.7万人増という結果となったのです。

 これまで金融引き締めを続けてきたにもかかわらず、堅調な雇用増加が確認されたことで、意表をつかれた結果となりました。米国株式市場は2月2日の高値から下落局面に入っており、雇用統計後に利上げ停止の期待が後退し、警戒が強まったことがわかります。

 ただし、雇用統計は非常にブレの大きい指標であり単月では判断することができません。次回以降の結果も踏まえて、状況を見極める必要があります。仮に、来月以降も強い雇用が確認された場合には、賃金インフレ懸念が再燃し、利上げ停止への期待感はますます後退する恐れがあります。

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