職場全体に残業申請をしづらい雰囲気が漂う会社も(イメージ)
政府が「働き方改革」を掲げ、労働環境の様々な法整備が進む一方、ルールを守らない企業も散見される。時間外労働に関するトラブルは深刻で、中には会社からサービス残業を暗に強いられる従業員も。退職代行サービスを運営する「モームリ」にもそうした職場の悩み相談が多く寄せられているというが、どういった会社に気を付ければよいか。退職代行モームリによる新刊『今の会社、ヤバいかも!? 3万人の「もう無理!」でわかる会社の見分け方』より一部抜粋・再構成して、実際の相談事例をもとに“ヤバい会社”の特徴と注意点を解説する。
【相談事例】残業申請はしちゃいけない!?
転職して地域の中核病院に勤め始めたのですが、人手不足で看護師の業務量が異常なほど多く、定時に上がれません。ほぼ毎日残業をしていましたが、残業申請は月に1日分程度しかできませんでした。上からのコスト削減圧力が強く、周りの先輩看護師たちも残業申請をしていないため、職場全体に残業申請がしづらい雰囲気があります。(医療関係・K病院看護師33歳/女性)
【モームリ解説】
残業に事前申請制や事後申告制を導入している会社は多く、それ自体は法律で規制されてはいません。会社側としては、正規の勤務時間中はわざとダラダラ働き、残業代で稼ごうとするような行為を防ぐためにも残業の申請/申告制は有用となります。
ただし、この事例のように、先輩社員が残業申請を出していないので新人も出しづらい、という雰囲気の職場も多いです。しかし、時間外労働をした分は割増賃金を支払うのが法律上のルールですから、法律違反となります。逆に、上司や先輩社員が残業申請の仕方を教えてくれるようなところはホワイトな職場と言えますが、そうした職場の雰囲気は入社してみないとわからないので、求人募集の段階で見極めるのは難しいでしょう。
また、タイムカードの退勤を打刻しているのにみんな残業している、というケースもしばしば見受けられます。しかし、未払いの残業代を争う裁判などでは、残業申請が出されず、会社側が残業を黙認している場合でも、「人手不足で勤務時間内に終わる業務量ではない」「周りのほかの従業員も残業をしている」といった状況を示すことができれば、「黙示的な残業命令」があったものとして残業代を得られる判決が出されています。
なお、2023年にはずっと病院に泊まり込んで働いていた医師が過労自殺する、という痛ましいニュースがありました。このニュースでは、残業申請に基づく時間外労働がゼロになっていたことが判明し、残業申請をしにくい雰囲気を作っていた病院側の体制が厳しく批判されました。このように、申請/申告制を悪用して残業をごまかしていたことがバレた時には会社側は大きなダメージを負います。にもかかわらず、残業申請しにくい雰囲気を放置しているような場合は、よほど人件費が逼迫しているか、労務・法務を疎かにしているので、ヤバい会社の傾向が強いと言えるでしょう。