有名企業のTOB(公開市場買付)やM&Aが相次いで話題になっている
トヨタ自動車のルーツとなる企業で東証などに上場している豊田自動織機をめぐり、トヨタグループは3日、株式の非公開化に向けた計画を発表した。豊田自動織機については、以前からTOB(公開市場買付)に関する報道があり、株価も期待して上昇を続けていた。しかし、発表されたTOB価格は当日の終値を下回るもので、翌日には大きく売られることとなった。今回の経緯をどう見るべきか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が解説する。
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前回記事《住信SBIネット銀行、NTTドコモによる買収発表までの株価乱高下を読み解く 昨年来、期待で株価が上がるも失望で売られ下落トレンドに…ストップ高銘柄を事前に仕込む難しさ》で取り上げた住信SBIネット銀行に続き、豊田自動織機のTOBに関する動きが株式市場で大きく注目された。
6月3日、日経新聞が「豊田織機、トヨタなどの買収提案受け入れ 1株1万6300円でTOB」と報じた。このTOB価格は豊田織機株の3日終値(1万8400円)を11%下回るものであり、より高いTOB価格を期待した投資家にとって目論見が外れるものとなった。
以下、同社の事業と今回のTOB価格にまつわる動きを整理しておきたい。
豊田自動織機(6201)のTOB関連ニュースと株価推移
豊田自動織機の現在の主力事業はフォークリフトで、同分野では世界シェア首位となる。売上高は2025年3月期で4兆849億円。自動車事業ではトヨタと連携し、多目的スポーツ車(SUV)「RAV4」の車体製造を担っているほか、電気自動車(EV)の性能を飛躍的に高める「全固体電池」の開発をトヨタと共に進めている。
4月25日に発表された2025年3月期本決算発表時の株価は終値で1万3225円で、株価指標はPER(株価収益率)23倍、PBR(株価純資産倍率)0.81倍とPBRは1倍割れ水準となっていた。同日、ブルームバーグから「トヨタ創業家が豊田織に買収・非公開化提案-関係者」と報道があった。
ここから豊田自動織機の株価は急伸し、乱高下を繰り返しながらも6月3日には最高値となる1万8535円と40%の上昇を遂げた。