NTTドコモによる住信SBIネット銀行の買収とNTT、SBIホールディングスの資本業務提携が発表された(5月29日。写真:時事通信フォト)
NTTドコモが住信SBIネット銀行の買収を発表しTOB(株式公開買い付け)を実施する。TOB価格が決まったことで住信SBIネット銀行の株価も大きく上昇した。今回のTOBが決まるまでの株価はどのように推移していたのか。個人投資家、経済アナリストの古賀真人氏が買収をめぐる報道に着目し、解説する。
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5月29日、NTTドコモ(以下、ドコモ)が住信SBIネット銀行(以下、住信SBI)をTOBすることが発表された。住信SBIネット銀行に関するTOBをめぐるニュースは、2024年半ば以降からたびたび報道され、株価もそれにともない大きく動いていたが、今回、それがようやく実現したことになる。TOB価格が決まったことで住信SBIの株価も大きく上昇した。
一方で、これまでの株価の上下動によって、住信SBIへの投資では思うように利益が出なかった投資家も多いかもしれない。そこで、今回は、これまでの買収を巡る報道と株価の推移を振り返ってみたい。
TOBをめぐる報道のたびに株価は乱高下
住信SBIネット銀行に関するTOBの話が注目を集めたのは、2024年11月のこと。同月28日、週刊文春電子版が「ドコモが住信SBIの買収に動いている」という内容の記事を配信。前日の27日にも東洋経済オンラインが銀行業への参入を表明しているドコモの買収先の候補として、住信SBIの名前が急浮上していると伝えている。
これを受けて住信SBIに注目が集まり、株価は11月28日の始値3100円から、2025年2月6日終値5020円まで、ほぼ一直線に約62%の上昇となった。しかし、翌2月7日、NTTの2025年3月期第3四半期決算会見で、同社の経営陣が「自前で銀行を立ち上げることを検討したい」と発言した。これにより、ドコモによる住信SBIの買収に対する期待が後退、住信SBIの株価は急落する。同日、前日比▲11%となる555円安となり、翌営業日も▲5.8%となる260円安に。
その後も、住信SBIを巡っては、ダイヤモンド・オンラインが3月にドコモがSBIホールディングス(以下、SBI HD)と進めていた住信SBIの買収交渉を断念したと報じ、株価は急落、その後も株価は乱高下を続けながら下落トレンドを続けた。
住信SBIネット銀行(7163)の株価(Trading Viewより)
そして5月29日、ドコモが住信SBIのTOBを正式に発表した。1株4900円という買取価格は前日終値である3285円から比べて高い金額となり、買いが殺到。さらなる材料として、SBIホールディングスが保有する住信SBI株式全てのドコモへの売却や、NTTとSBI HDの資本業務提携も公表され、株価はストップ高の買い気配となった。
翌5月30日、株価はTOB価格にサヤ寄せし、4685円でストップ高に。ドコモの金融サービス強化戦略も明らかとなった。
このように、住信SBIの株価はこの半年間、様々な思惑から乱高下を繰り返してきたものの、5月29日、30日と、2営業日連続のストップ高買い気配を付け、大幅上昇となった。