最高値圏で推移する金価格の行方は(時事通信フォト)
中国株の第一人者・田代尚機氏によるプレミアム連載「チャイナ・レポート」。金価格高騰の背景に何があるのか、今後の推移はどうなるのか──。
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NY金先物価格が4月22日につけた過去最高値(3509.90ドル/トロイオンス)水準に再び近付いてきた。
4月2日にトランプ大統領が相互関税政策の具体的な税率を発表、米中が追加関税率をかけ合う展開となり、米国でスタグフレーションが発生するのではないかといった懸念が強まった。ただ、その後は5月10、11日の米中経済貿易ハイレベル会談を経て、双方115%の追加関税率の引き下げ(ただし、24%分については90日間の猶予)が行われることになり、金先物価格の上昇は一旦落ち着くかのではないかとみられた。しかし、トランプ減税の恒久化などが盛り込まれた減税法案がマーケットで注目されることになり、財政赤字拡大懸念の再燃から、足元の金先物価格は反発する展開となっており、5月23日の終値は3365.80ドルで引けている。
一般に金利のつかない金(ゴールド)は、金利上昇時には安くなる傾向があると言われている。しかし、今回は長期米国債金利が歴史的な高水準となる中での金価格の上昇である。その背景には、米国財政状態の悪化、ドルへの信頼低下、地政学リスクの高まりの常態化などがある。
長期の価格チャートを確認すると、足元では異常な急騰が続いている感がある。2000年前後数年は300ドルを割るような安値に沈んでいたが、低迷期を過ぎると上昇トレンドが出始め、2008年のリーマンショックを経て2011年には1900ドルを超す高値もあった。その後は一旦戻しており2010年代後半は、1000ドル近くまで下落したものの、2019年から2020年にかけて大きく上昇、2000ドル近辺まで戻している。その後、調整期を経て、2022年11月の1600ドルあたりの安値から約2年半の間に倍返しを超える上昇となっている。
歴史的高値にあるこのタイミングでの金投資に対して、高値掴みを懸念する投資家も多いのではなかろうか。短期的には、米国のインフレ率、金利、ドル指数といった金融指標の不安定な動きに、朝令暮改のトランプ政策による影響が加わり、ボラティリティの高い状態が続きそうだ。