証券会社の格付け評価も左右
住信SBIの株式格付けについては、以下のニュースが出ており、これも株価が下落する一因にもなっていた。5月21日、「JPモルガン証券のアナリストが同社について、ニュートラルからアンダーウエートに格下げ」との記事が出ており、この日の同社の株価は前日比で▲4.2%となる140円安となった。
しかし、同行の預金量はネット銀行では最大の楽天銀行に次ぐ規模であり、貸出金においてはネット銀行でトップである。今後の金利上昇を考えればJPモルガンの評価は株価に影響を与えるほどのものであったかは疑問符がつくところだと見ている。
2024年12月24日、ジェフリーズ証券ではネット銀行2社のカバレッジを開始し、同行の投資判断は「buy」、目標株価は4700円としている。このアナリストレポートでは、同行がBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス=銀行機能を銀行以外の企業にクラウドサービスとして提供する)のフロントランナーであり、サービスを大幅に拡大する可能性があるとの見方から、楽天銀行よりも同行を高く評価していた。また、0.25%の金利上昇で同行は営業利益に対し34%の恩恵を受けるとも試算している。
このように、格付けの評価が証券会社によって差異がある。企業の評価は投資家自身の視点でおこなうことが、投資判断においては重要になるということを認識しておいたほうがよいだろう。
ドコモにとって銀行参入は以前から最重要課題だった
TOB報道については当初事実確認が取れないまま期待で株価が上がり、失望で売られるという乱高下を続けてきたが、先述の通り、ついにドコモが買収するという公式発表が行われた。
通信大手は、金融事業やポイント決済サービスを軸に経済圏の拡大を図ってきている。銀行との連携においてはKDDIがauじぶん銀行、ソフトバンクがPayPay銀行、楽天グループが楽天銀行をグループ内に持つものの、大手4社の中でドコモだけが自前の銀行を持っていないという状況であった。
ドコモの前田義晃社長はかねて、「銀行口座はあらゆるサービスの入り口になる」などと発言しており、参入に意欲を示していた。銀行をてこにした金融サービス拡大は最重要課題であったことが想像でき、最終的に住信SBI買収というかたちで結実することとなった。
ドコモ前田社長は「住信SBIをグループに迎えることで、例えば『BaaS』の課題解決策を幅広い顧客に展開できるようになる。結果として住信SBIの成長につながる」と今後の展望を語っている。