IT導入補助金をめぐる不正受給が横行しているという(写真:イメージマート)
昨年10月、会計検査院は2020年から3年間に約1億4755万円の「IT導入補助金」の不正受給があったと公表したが、問題はまだ解消していないようだ。この“抜け穴”が狙われ、中国のSNS上では「簡単に不正受給できる」と謳う業者が多数現われている。その手口とは──。中国に詳しいライター・廣瀬大介氏がレポートする。【全3回の第1回】
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〈違法ではない。制度の抜け穴を利用しているだけだ〉(中国語の日本語訳)
これはある「IT導入補助金」の導入支援事業者である「ベンダー」とやり取りした際の言葉だ。この補助金制度における「ベンダー」とは、ITツールを販売し、補助金申請者のサポートを行なう存在のはずだが、取材を進めると不正受給の斡旋をしている業者がいる疑惑が浮上した。経済産業省所管の独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が2017年に開始した「IT導入補助金制度」について、ある中小企業診断士は次のように説明する。
「生産性向上を図ることを目的に始まった制度です。紙でやっていたものをデジタル化したり、在庫システムなどの導入を支援するものです」
IT導入補助金の特徴や申請方法についてこう続ける。
「申請が比較的簡単で、他の補助金が準備期間に1か月ほどかかるのに対して、申請自体は2日くらいで終わる。申請する際は、ITツールの販売者であるベンダーとともに申請します。例えば、飲食店がQRコードを使った注文システムの導入を行なう場合、こうしたITツールを販売するベンダーに補助金の対象になるかを相談し、申請する。対象であれば導入費用の一部が補助金として支給されるという流れになります」(同前)
だが、IT導入補助金をめぐって一部で不正行為が横行しているという。
「ベンダーが導入費用を過大に請求して申請者にいくらかキックバックしたり、都道府県が行なっている同類の補助金について重複受給するケースも起きています」(同前)
中小企業庁は取材にこう語った。
「不正が確認されてきたことは事実です。ベンダー選定の審査強化や立ち入り調査など対策を実施していますが、具体的な対策は手の内を明かすことになりかねないため伏せさせていただきたい」(経営支援部生産性向上支援室)
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【プロフィール】
廣瀬大介(ひろせ・だいすけ)/1986年生まれ、東京都出身。フリーライター。明治大学を卒業後、中国の重慶大学に留学。メディア論を学び2012年帰国。フリーランスとして週刊誌やウェブメディアで中国の社会問題や在日中国人の実態などについて情報を発信している。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2025年7月11日号