福岡県北九州市と水巻町にまたがる施設内にある「アグレボバイオテクノロジーセンター」を組み入れた「みんなで大家さん39号」(公式ホームページより)
個人投資家から2000億円超を集めた不動産投資商品「みんなで大家さん」の配当が2か月連続でストップ。出資者たちの不安と怒りはピークに達している。
同グループの投資商品の1つが、福岡県北九州市と水巻町にまたがる施設内にある「アグレボバイオテクノロジーセンター」の「みんなで大家さん39号」だ。 同社のウェブサイトを覗くと、〈「アグレボ」とは「agriculture(農業)revolution(革命)」の略〉として次のように謳う。
〈バナナを中心に種苗が生産されており、対象不動産で生産された苗は通常24ヶ月程度かかるところ、わずか6ヶ月目で収穫可能です。苗の成長に必要な日照も従来の6分の1で足りるため、従来のように日照差で収穫量が大きく左右されにくいため短期間に安定した収穫が見込めます〉
この投資商品は昨年11月には元本の償還満期を迎えるはずだったが、償還が1年延期され、今に至っている。ノンフィクション作家の森功氏が、「アグレボ農園」の実態についてレポートする。(文中敬称略)【全3回の第2回】
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北九州地方のアグレボ農園は当初、バナナの苗を凍結させると遺伝子が活性化されるという触れ込みで投資家を募ってきた。グループの関係者が打ち明ける。
「バナナ栽培は、共生バンクグループの柳瀬(健一)会長が、岡山県で発明された“もんげーバナナ”という農法に目をつけ、提携して売ろうとした事業でした。もんげーとは岡山弁で物凄いという意味です。
凍結解凍覚醒技術なる特殊な農法で、バナナの苗を凍らせると、氷河期時代の遺伝子が蘇り、皮ごと食べられる栄養価の高いバナナになる。鹿児島県に『神バナナ』という農業法人までつくって栽培を始め、それを北九州に持ってこようとしたのです。しかし、凍結農法の発明者とトラブルになり、使えなくなった。それで今は凍結農法とは謳わず、単なる有機農法にしていますが、実態はありません」
事業実態を確かめるため、私も今年5月、アグレボセンターを訪ねた。JR鹿児島本線の折尾駅から車で10分ほど走ると、「グランモール」という3階建ての巨大な建物が見えてくる。このグランモールの中心がアグレボセンターなるバナナの有機栽培場だ。