半年以上経っても仕事はなかった…(イラスト/大野文彰)
登録料を払ってエキストラ事務所に所属したものの、仕事がないうえに、辞めようと思ったら解約金の支払いを求められた──そんな事態に遭遇したらどうすればいいのか。解約金を払わずに契約を解除できるのか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
娘が街でエキストラの事務所にスカウトされました。「ドラマや映画に出演するためには登録料が必要」と言われ5万円支払い、その後すぐ、「オーディションに受かりやすくするには50万円かかる」と言われ支払いました。
半年以上経っても仕事がないので解約を申し出ると「解約金がかかる」と言われました。特にレッスンを受けたわけでもないので支払いたくありません。どうしたらよいですか。(東京都・49才女性・アルバイト)
【回答】
娘さんは登録料を支払って、ドラマ等のエキストラに出演する機会、具体的にはドラマ制作者のオーディションに応募できる情報の提供を受ける契約をしたのだと思います。
街頭で誘われ、契約したとのことですが、このやり方はいわゆるキャッチセールスとして特定商取引法の適用を受ける訪問販売の一種です。そこで、同法が定める一定の文書(法定文書)の交付を受けていなければ、いまからでも契約をクーリングオフでき、支払い済みのお金も返金請求できる可能性があります。
仮に法定文書の交付から8日が経過し、クーリングオフできる期間が過ぎていても、契約の性格が問題です。契約直後の50万円の支払いで「オーディションに受かりやすくする」とは、特にトレーニングもしていないところからして、ドラマ制作者に対し有利な取り計らいを持ちかけてやるということかと推察します。エキストラの紹介や口利きを目的とする契約であり、娘さんからすれば、こうした働きかけを事務所に委託した関係になると思います。