プロの料理人なら料理がうまいのは当然か(イメージ)
誰かの行為に感銘を受けた時、「すごいですね!」と褒めることがあるが、この「褒める行為が案外、難しい」というのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。言い方を間違えると、相手をバカにしてるようにも聞こえることがあるし、相手がその道のプロフェッショナルであれば、なおのこと。最近、プロの料理人との付き合いが増えているという中川氏が「素人がプロの職業人を褒める難しさ」について綴る。
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この5年ほど、プロの料理人との交流が増えました。普段はそのお店に客として行くのですが、それとは関係なく彼らがオフの時、一緒にホームパーティーをしたり釣りをしたりするのです。
東京でイタリア料理を経営する男性・よっちゃんは、過去に3回ほど、年末年始に私が住む佐賀県唐津市に来て、新年会を行うお宅で腕を振るってくれました。家主は「よっちゃんが来るから、この鯛は捌いてもらってカルパッチョとか刺身を作ってもらえばいいよね」と言う。
当然「異議なし」なわけで、よっちゃんは「よーし、やりますよー!」と腕まくりをし、見事な切り方と盛り付け、味付けをしてくれます。それを見た我々は「さすが料理人!」「うわっ、プロの技!」などと称賛するのですが、コレって店では言わないことなんですよね。ここで初めて「いかにしてプロを褒めるか」という悩みにぶつかったわけです。
たとえば、滅多にないでしょうが、プロ野球選手に野球の指導をしてもらったとしましょう。あるいは草野球のメンバーに元プロ野球や社会人野球経験者がいたとする。その人に「やっぱ守備上手ですね!」や「さすがに球が速いですね!」「スイングのレベルが違いますね!」なんて言いたくなってしまうもの。
しかし、それは相当失礼なことではないのか、とも思うのです。だって、その人はその類まれなる才能とプロとしての実力でお金を稼いできたわけだから。それを個人的な関係がある場所で披露しただけ。自分は雇い主でもなんでもないのですが、その人からすれば、あたかも雇い主から評価されているように感じるかもしれません。
料理人がプライベートの場所で料理を披露してくれたり、ホームパーティーに自作の料理を持参してくれた時に、「こういうことを言うのは若干失礼かな」と考えるようになりました。
