台湾有事が軍事衝突に発展した場合、日本企業にどのような影響が及ぶのか(習近平・国家主席。Getty Images)
緊迫化する日中関係。台湾有事を危惧する声も聞こえてくるなか、今年は“超一強”体制を築く習近平・中国国家主席をめぐるさらに重大なリスクがあるという──社会学者の橋爪大三郎氏とキヤノングローバル戦略研究所上席研究員兼中国センター長の峯村健司氏がその衝撃シナリオを詳らかにする。【全3回の第2回】
日本企業にとって差し迫る危険は従業員の身柄拘束
峯村:日本への圧力は高市政権に対する批判や軍事的圧力が目立ちますが、年単位で見れば、日本企業に対するプレッシャーも徐々に強まるでしょう。日本企業への攻撃は中国経済にとっても痛手ですが、経済よりはるかに重要な「台湾統一」のために実行されるはずです。
橋爪:中国では政治が第1。第2、第3がなくて第4か第5に経済や文化がある。中国の大企業の幹部はみな共産党員で、政治的な目的のもとビジネスに従事している。資本主義的に見えても、一皮剥くと伝統中国的な行動様式を取ることを知っておくべきです。
もし台湾有事がハードな軍事衝突に発展したら、日本企業の資産凍結や設備の接収、現地駐在員の身柄拘束など、あらゆる事態を覚悟しなければなりません。
峯村:日本企業にとって差し迫る危険は従業員の身柄拘束です。現在、中国本土で“スパイ容疑”をかけられ拘束された日本人は17人に及び、米国人よりも多い。彼らを助けるには「人質交換」しかない。それが世界の現実です。しかし日本にはスパイを取り締まる法律はなく、防諜機関も十分とはいえません。
橋爪:軍事面の見直しも急務です。日本は長らく専守防衛で、長距離爆撃機や給油機、射程の長いミサイル、航空機が発着できる航空母艦、といった攻撃力を持ちませんでした。今後は米国やEUとよく相談して軍備を増強し、NATOのウクライナでの失敗を教訓として、より強い平和のメカニズムを積極的に築いていかねばなりません。
峯村:昨年12月6日の中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射は30分以上も続きました。異常事態です。自衛隊は反撃してこないと完全に舐められている。つまり抑止力が極めて弱く、戦争が起こりやすい状態であるということです。
トランプ政権は日本をはじめとする同盟国の軍事力増強を歓迎するはずです。トランプが中国との間で「G2=新型大国関係」のディールを成立させる前に、日本も今やれるだけのことをやっておく必要があります。
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【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年、神奈川県生まれ。社会学者。大学院大学至善館特命教授。著書に『おどろきの中国』(共著、講談社現代新書)、『中国vsアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(共著、集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)、『火を吹く朝鮮半島』(SB新書)、『あぶない中国共産党』(峯村氏との共著、小学館新書)、『日本人のための地政学原論』(ビジネス社)など。
峯村健司(みねむら・けんじ)/1974年、長野県生まれ。キヤノングローバル戦略研究所上席研究員兼中国センター長。ジャーナリスト。北海道大学公共政策大学院客員教授。朝日新聞で北京・ワシントン特派員を計9年間務める。中国軍の空母建造計画のスクープで「ボーン・上田記念国際記者賞」(2010年度)受賞。著書に『十三億分の一の男』(小学館)、『台湾有事と日本の危機 習近平の「新型統一戦争」シナリオ』(PHP新書)、『あぶない中国共産党』(橋爪氏との共著、小学館新書)など。
※週刊ポスト2026年1月16・23日号
