セダン派生のワゴンスタイルではなく、時流に合わせてクロスオーバーSUVとして登場した「クラウン・エステート」。写真はPHEVモデルの『RS』はボディカラーの影響かもしれないが実に落ち着いた“らしい佇まい”
2022年に登場した現行の16代目クラウンには“4タイプのボディ”が用意され“クラウンファミリー”として展開することが発表された。先陣を切ったのはサルーンとSUVとのクロスオーバー「クラウン・クロスオーバー」、次に王道の高級サルーン「クラウン」、スポーティ優先のクロスオーバーSUV「クラウン・スポーツ」と続き、2025年3月に最後の「クラウン・エステート」が登場。16代目のお披露目から約2年半、4種類のモデルはすべてが出揃った。スタイルはSUVではあるが、エステートと名乗る。果たしてプレミアムワゴンとしての実力はいかがなものか? シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」。今回は自動車ライター・佐藤篤司氏が“クラウン・エステートの魅力”を探ってみた。
クラウンにとって「エステート」は、70年の歴史を彩る重要なピース
クラウンと言えばサルーンと考えがちだが、その歴史を見れば、「エステート」は欠かせない存在だということが分かります。
実は初代クラウン(トヨペット・クラウン)はメインに“観の開きドア”で知られる乗用車の高級セダンを置きましたが、そのクラウンをベースに開発した派生モデルがいくつかありました。タクシー専用車「トヨペット・マスター」や、商用のバン(ワゴンスタイル)の「マスターライン・クラウン・バン」があったのです。さらに荷台を持ったピックアップトラックが、シングルキャビン(2ドア3人乗り)の「マスターライン・ピックアップ」と、運転席の後ろに2列目の座席を備えた(4ドア6人乗り)の「ダブルキャブ・ピックアップ」までありました。どのモデルも商用車で車名にクラウンの名はありませんが“ファミリー”といえます。車に乗ることすら特別な時代でしたから、たとえ商用のバンでもピックアップトラックでも、家にあるだけでも憧れの生活だったのです。
このように日本のモータリーゼーションが本格的に動き出そうとしている時代に、初代クラウンは派生モデルを揃えながらトラックは3代目まで、ワゴンはなんと11代目クラウンの時代まで、それぞれ開発されていました。またクラウンには途中、ハードトップモデルなども加わったりと、なかなかにバリエーション豊富なモデルであり、現行16代目の4タイプは、歴史から見れば得意技とも言えます。
ではそんなクラウンの中で最新の「エステート」とはどんな個性を備えているのでしょうか?
やはりエステートと言えば「広いラゲッジスペースを備える」ことで積載性能を上げ、広範なライフスタイルへの対応力を持っていることが特徴。
実際、リアハッチを跳ね上げると5人乗車時でもラゲッジルームの容量は570L確保され、その奥行きは108cm。リアシートの背もたれを前方に折りたためばフラットな床が出現し、その奥行きは170cmです。ただし、これは床面の長さなので、フロントシートの背もたれまでなら2m弱となります。さらにラゲッジルームの幅(左右のタイヤハウス間)は103cm、開口部の高さが70cmという、スクエアで使いやすいラゲッジルームが出現します。全長4,930mm×全幅1,880mm×全高1,625mmというボディサイズの中で十分に実用性の高いスペースを確保しているといえます(※荷室のサイズは実測)。
ただし「エステート」を名乗っていながらも、セダンベースのステーションワゴンではなく、車高を上げたクロスオーバーSUV。地上からラゲッジルームの床の高さは約70cm。単純には比較できませんが、例えばセダンをベースにした同クラスのワゴン、BMW5シリーズツーリングの床の高さが約62cm。2台を比較すれば、やはり「クラウン・エステート」の荷物の積み下ろしはより力を必要とすることになると思います。
一方で現代の主要スタイルであるクロスオーバーSUVは人気も高い。なによりもSUVの多くは、車検証の「車体の形状」欄に「ステーションワゴン」と記載されていることが多い。これは1964年制定のJIS規格に基づく分類では「箱型/ステーションワゴン/幌型」の3類しか存在していないことに起因します。その分類によれば箱形はセダンやクーペ、幌型はオープンカー、そしてステーションワゴンは「車体は箱型で、後部の形状は車室内容積が大きく設計されている」となっています。たとえ背が高くても後部に大きな車室内容量を持っているSUVはステーションワゴンに該当し、クラウン・エステートもステーションワゴンとなります。ただこの分類はメーカーの自己申告であり、SUVでも箱形と記載されることがあります。
