「日本だから日本語で対応するのは当然」という意見をどう考えるか(写真:イメージマート)
日本にも多くの外国人観光客が押し寄せるようになり、飲食店などでも英語メニューを用意するなど、インバウンド対応をする店が増えている。そうしたなか、SNSでは、ある飲食店の従業員が「外国人観光客に日本語で対応する」様子の動画が注目を集めた。そこへのネット上の反応も踏まえて、インバウンド対応と言語の問題について、海外旅行好きのネットニュース編集者・中川淳一郎氏が考察する。
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京都の和食店で、女性従業員が立て板に水のごとき様子でメニューを外国人観光客に日本語で説明する動画がXで1300万回以上再生され、「インバウンドと言語」への議論が活発化しています。いや、むしろ反感の方が多かったのではないでしょうか。というのも、奥に映っている白人女性が大袈裟に口をポカーンと開けたり、呆れた表情をするなどしていたからです。これをきっかけに「ここは日本だ!」という意見が優勢になった印象です。
動画には「Completely lost」(まったく分からない)のテロップがつき、この女性が殊更に「日本語が分からない私たちにこの店員は配慮しないの?」といったオーバーリアクションをしています。「日本で外国人観光客が困ったことランキング」の1位は多くの場合「英語が通じない」ですが、SNSでは「ここは日本だ」「最低限の日本語は覚えて来い」「アプリを使え」といった意見が出るのもよくある話。今回、特にそうした意見が目立ったのは、女性のリアクションが、英語を話さない日本人をバカにしているように映ったことも原因でしょう。
ちなみに女性従業員は右側に映る別の男性(アジア系にも見える)に向けて日本語で説明していることから、恐らく日本語が分かる男性もそこにいると推測されます。であるなら、この男性が仲間に母国語で伝えると想定できるわけで、この女性従業員の対応は間違っていない、という声が優勢になりました。ネットでは日本語を貫き通すこの女性を称賛する声が多かったものの、客全員が日本語が分からなかったら英語で説明していた可能性もあったかもしれない。
インバウンド客により各地が大混雑をしたり、大手を振って爆買いをする様子をこの数年間見続けたことで、嫌気がさしている人もいるかもしれません。オーバーツーリズムは世界各地でも問題視されており、バルセロナでは「観光客は帰れ」の横断幕が掲げられたこともある。そうした流れのなかで今回の動画が注目されたわけです。
