「地面師事件」について語り合った森功氏(左)と河合桃子氏
地主になりすまして、他人の土地を売ってしまう──「地面師事件」と呼ばれるグループ犯罪は、ネットフリックスのドラマ『地面師たち』が大ヒットして注目されたが、そのモデルとなったのは2017年、積水ハウスが五反田の一等地をめぐり、地面師たちに55億円を詐取された詐欺事件である。
この事件をめぐって今年、『地面師vs.地面師 詐欺師たちの騙し合い』(森功、講談社刊)と『地面師連絡役カトウ』(河合桃子、小学館刊)という2冊のノンフィクション書籍が刊行され、話題を集めている。著者である森氏と河合氏が語った「地面師事件」に惹かれる理由とは。
複数人でひとつの劇場型犯罪が出来上がっている
河合:積水ハウスの事件で犯人たちの逮捕劇が始まったのは、発覚翌年の2018年10月。森さんはほぼ同時期の12月に、1冊目の本『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』(講談社刊)を刊行しているんですよね。
森:そうです、2015~2016年頃から、地面師詐欺がグワッと流行ったんですよ。当時の被害届だけで、年間50件は出ていたのではと言われるぐらいだった。そのなかでも被害総額が55億円と大きかったのが積水ハウスの事件でした。
逮捕者のうち主犯扱いされて懲役11年をくらったカミンスカス操(逮捕当時59)という男から、2年ほど前に「私は主犯じゃない」という手紙が届いたんですよ。1冊目を書いた当時はわかっていなかったこともあったし、そこにちょうどドラマの配信が重なったのもあって、深掘りして“真の主犯”を探ったのが、今回改めて本を書いた経緯ですね。
河合:私が本の主人公としたカトウ(仮名、懲役4年半の実刑判決を受け現在出所済み)は、カミンスカスになりすまし役の女性を引き渡したりしていた「連絡役」という名の末端だったんですが、まさにドラマを見て「実際は全然違った」ということを話していて。現場目線で見た事件の実像はどうだったのか、というところに興味を持って、本を書きました。
森:地面師詐欺は簡単に言うと「なりすまし」。大家や地主になりすまして、買い手に金を払わせる詐欺ですが、特徴はやっぱり劇団みたいに色々な役割のメンバーがいることですね。シナリオを書く奴がいて、キャスティングする奴がいて、道具を用意する奴がいて。複数人でひとつの劇場型犯罪が出来上がっている。
河合:カトウも言っていましたが、取り調べの際に刑事が「あちこちの人間が別々のことを言っていてわけがわからない。お前ら直接話して調書を作ってくれ」と冗談めかして嘆いていたと。それくらい、事件に関わる人が多いし、それぞれ主張することが違う。
森:ドラマでは全員が集まって会議するような場面が何度かあるけど、実際にはリスク管理のために、全員で情報を共有するなんてことはない。主犯格の人間がそれぞれの手駒を連れて、縦割りの仕組みを作って動くわけですよね。あえて情報を共有しないことで、「知らなかった」という言い訳が成り立つようにしているんです。
河合:積水ハウスから詐取した手付金も、カトウは誰の手に渡ったのか知らない。「そこはあんまり気にしない」なんて、むしろ知らないようにしているわけですよね。
