南海電気鉄道の空港特急「ラピート」。同社は、乗務員と車両の運用計画作成を効率化するため、量子コンピューターを疑似的に再現する技術の導入を決めた
南海電気鉄道(以下、南海)は、2025年度に乗務員と車両の運用計画作成を効率化する新システムの効果検証を実施した。このシステムでは、量子コンピューターを疑似的に再現する日立製作所(以下、日立)の独自技術が使われている。南海と日立は、2026年7月14日に共同発表し、2027年度以降のダイヤ改正から業務プロセスを見直すことを前提に、このシステムの構築を進めることを明らかにした。
南海と日立がこのような取り組みをするようになった経緯とは。そもそもこのシステムはどのようなものなのか。交通技術解説者・川辺謙一氏が解説する。
手間がかかる運用計画作成
結論からいうと、南海がこのシステムの導入を決めたのは、乗務員の運用計画作成に関する課題を抱えていたからだ。
一般にはあまり知られていないが、乗務員や車両の運用はむずかしい。ここでいう運用とは、乗務員や車両の「やりくり」であり、それらがうまくいかないと、列車を定められた時間に動かすことができない。運用は、鉄道輸送を実現する鍵の1つといえる。
南海では、1日に数百本の列車を走らせ、旅客を運んでいる。このような旅客輸送を実現するには、各列車に、乗務員(運転士・車掌)と車両をそれぞれ割り当てなければならない。
乗務員と車両の運用には、それぞれ制約がある。乗務員は人間なので、労働時間や休憩時間だけでなく、食事や睡眠への配慮、出退勤場所や宿泊場所の調整など、多くの制約がある。いっぽう車両に関しては、車両形式や編成条件、検査周期、留置線容量(車両を留置できる線路の収容能力)などを考慮しなければならない。
また、乗務員の運用を示すものに「乗務行路表」がある。これは、乗務員の動きを示す図表で、いつどの列車に乗務するかがひと目でわかるようになっている。乗務員はこれを見て、定められた列車に乗務し、路線内を移動する。同様に、車両の運用を示す図表もある。
南海の乗務員の「乗務行路表」の例。一番上に主要駅の略称(左端は難波[なんば]駅、右端は和歌山市駅)が書いてあり、乗務員の動きがひと目でわかるようになっている(画像:南海提供)
従来の乗務員運用計画作成の様子。机に付箋を置き、人の手を使って計画を立てるため、作成に時間がかかっていた(画像:南海提供)
南海では、乗務員の運用計画作成で課題を抱えていた。先述した「乗務行路表」づくりをふくめて、複雑な作業と専門知識を必要とするからだ。

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