財務省「天下り社外取締役」の推定年間報酬をランキング(写真:イメージマート)
相次いだ官僚不祥事により規制が強化され、「天下り冬の時代」と呼ばれたのも今は昔。企業経営において重要度を増す社外取締役ポストが、高級官僚の再就職の受け皿となっている。なかでも目立つのが財務省出身者だ。東証プライム上場企業を調査すると、財務事務次官や国税庁長官経験者ら、58人の財務省有力OB・OGたちが70社の社外取締役に就任していることが判明。本誌『週刊ポスト』が作成したその「報酬ランキング」から見えてきたものとは──。【全文】
企業と官僚の利害の一致
社外取締役は企業から独立した中立的な立場で経営を監督する役目で社外から選ばれる。日経新聞証券部キャップなどを務めた経済ジャーナリストで千葉商科大学教授の磯山友幸氏が仕事内容や報酬をこう語る。
「基本的に事業の業務執行はしません。以前は月1回の定例取締役会に出席するだけというケースも多かったが、最近は社外取締役の役割に対する目が厳しくなっており、取締役会のなかに次の社長を決める指名委員会、経営者の報酬を決める報酬委員会、財務や決裁の委員会などを設置する企業が増えて社外取締役も担当の委員会で経営をチェックすることが多い。
報酬は固定が一般的で、東証プライム企業クラスになると月100万円、年間1200万円程度は普通です。経営をチェックするという立場上、業績連動のボーナスや退職慰労金はないのが一般的です」
実は、この社外取締役の設置と増員を推進してきたのが財務省から分離した金融庁とその監督下にある東京証券取引所(東証)だった。
金融庁・東証は2015年の東証コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で上場企業に「少なくとも2名以上」の社外取締役を置くことを求め、2021年の会社法改正でそれが義務化されると、同年の指針改訂で東証プライム上場企業に社外取締役を「取締役の3分の1以上」(必要な場合は過半数の選任を検討)に増やすように定めた。さらに今年6月の指針改訂では親会社の支配下にあるプライム上場企業は少数株主保護のため、「少なくとも過半数」の社外取締役を置くよう求めている。
東証の理事長(社長)は長く財務省有力OBの天下りポストとされ、現在は木下康司・元財務次官が東証の持ち株会社・日本取引所グループの取締役会議長を務めている。前出の磯山氏が語る。
「もともとは天下りのために社外取締役という制度を作ったわけではありません。安倍政権のアベノミクス政策のなかで日本企業の生産性の低さが問題視された。たとえば企業は社長の出身部門が不採算で整理したいのに、社長の権限が強くて潰すことができない。そうした場合、外部の役員を入れて不採算事業を整理するように助言させることで日本企業の収益性を高める。儲ける力が社長に委ねられていた日本企業のガバナンスを変える目的で導入されました」
上場企業がガバナンス強化のために社外取締役を増やした背景には、企業側と官僚側の利害の一致があったという。
「日本企業は男性社会で多様性が低く、発想が画一的で成長しないと言われており、企業が社外取締役に一番欲しいのは女性です。他には弁護士、会計士などの専門家や業務に中立な学者。それに加えて企業は早い段階から官僚OBを社外取締役に望んでいた。企業にすれば官僚OBなら役所に睨みが利くという下心がある。役所側も、ちょうどその頃、公務員の再就職規制強化で天下りが減って困っていたから渡りに舟だった」(同前)
ではなぜ、役所のなかで財務省のOBが社外取締役に起用されるのか。
