人材紹介やキャリア支援を行なう株式会社morichの代表取締役を務める森本千賀子氏
なぜ、リクルート出身者は仕事ができると言われるのか。顧客の懐に入り込み、経営の悩みまで打ち明けられる存在になる。その力は、どこで磨かれるのだろう。今回は、人材ビジネスで実績を重ね、数々のメディアに出演し、“転職の女神”として知られるmorich社長・森本千賀子さんに話を聞いた。森本さんは、若手時代には自信が先走り、商談相手から手厳しい言葉を浴びたという。叱責や思いがけない贈り物を通じて、彼女は何を学んだのか。いまの仕事観を形づくった出会いと、成長を後押しした職場の風土ついて、『起業の天才!――江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(新潮文庫)の著者でジャーナリストの大西康之氏が迫る。(文中敬称略)【インタビュー・前編】
「自分が強みを発揮できる場所はどこか」
人材サービス業界に“転職の女神”がいる。人材サービスを中心に企業の困りごとを解決する会社「株式会社morich」社長の森本千賀子だ。リクルート人材センター(現株式会社インディードリクルートパートナーズ)で全社MVPなど受賞歴は30回超。独立後を含め2000人を超える人々の転職に携わった。猛烈に働きながら2人の子供を育てる「両取り」の人生を実践してきた。その生き方が注目され、2012年に出演したNHKの人気番組『プロフェッショナル~仕事の流儀』で紹介され、2022年テレビ東京『ガイアの夜明け』で“転職の女神”と呼ばれた。
――大学で英語学科の森本さんがリクルート人材センターに就職したきっかけはなんですか?
森本:子供の頃『スチュワーデス物語』に憧れて、客室乗務員(CA)になりたかったんです。でも大学に行ったら英語がペラペラの人が山ほどいて、「これは勝てない」と思いました。それならどこで勝負するか。当時、女子があまり志望していなかった「営業」だと。
就職活動の中で人材業界に関心を持った背景には、父の存在もあります。父は脱サラしてインテリア関連の会社を経営していましたが、人の採用にはとても苦労していました。その姿を身近で見ていたことで、企業にとって「人」がどれほど重要なのかを、子供ながらに感じていたのだと思います。
もう一つのきっかけは、大学3年生のときに読んだアメリカの本です。そこには、「人は自己実現のために転職する」と書かれていました。当時の日本は、一つの会社に長く勤めることが当たり前の時代。それでも私は、「日本にも、より自分らしく働くために転職する時代がきっと来る」と直感し、人材サービスの会社を志望しました。
実は親会社のリクルートも受けていたのですが、東大・京大卒の優秀な人たちがゴロゴロいる。そこで同じ土俵に乗るよりも、これから成長していくリクルート人材センターで、自分の可能性を広げたいと思ったんです。
振り返ると、昔から「みんなと同じ場所で競う」のではなく、「自分が強みを発揮できる場所はどこか」を考えて選んできたのだと思います。
