リシャールミルジャパン社長・川﨑圭太氏(撮影/藤岡雅樹)
一本数千万円以上という「超高級腕時計」ブランドの日本市場を切り拓いてきた経営者が、リシャールミルジャパン社長・川﨑圭太氏(65)だ。同社は、毎年大規模チャリティイベントを手がけ、被災地など数多くの復興支援をすることでも知られる。超高級ブランドを手がける会社が、なぜチャリティに力を入れるのか。その経営哲学に迫った。【インタビュー・前後編の前編】
精密な時計を地面に落とす
〈2001年に誕生したスイスの時計ブランド「リシャール・ミル」。F1や航空宇宙産業で使われる技術や素材を取り入れ、軽さと耐久性を追求してきた。その日本法人が、2010年設立のリシャールミルジャパンだ。川﨑氏と創業者リシャール・ミル氏との出会いは、川﨑氏のサラリーマン時代に遡る。〉
僕はもともと商社で時計の輸入をしていました。あるブランドとの取引を終了することになって、その交渉に来たのが当時、自分の会社を創業する前のリシャールさんだったんです。「在庫をどうするんだ」と、半分喧嘩のような、ものすごくハードな話し合いになりました。
ところが、最後に握手した時、彼の腕に見たことのない時計がはめられていた。「それ、どこの時計?」と聞いたら、「俺のブランドだ」と。これから会社を辞めて、自分の名前を冠したブランドを立ち上げると言うんです。
彼の時計は、最高峰の複雑機構「トゥールビヨン」を備えていた。時計の内部で重力によるズレを正す精密な仕組みなのですが、そんな時計を「落としても平気なんだ」と、ポンと地面に落としてみせる。そんな技術が可能なのかと驚いたし、とにかく見た目がかっこよかった。値段を聞いたら、当時で2300万円。「桁、違わない?」と言いましたね。
2026年新作モデル(「RM 55-01 マニュアル」 手巻き、スケルトンムーブメント、時・分・秒 表示、 ケースサイズ:縦47.33 ×横37.95 × 厚さ10.75 mm ケース素材:チタン×ホワイトクオーツTPT、バリスティックストラップ、155000スイスフラン)
その後もいろいろなブランドを探しましたが、あの時計だけは忘れられず、1年ほど経ってリシャールさんに電話したんです。「あれ、僕にやらせてくれないか」と。
すぐパリへ行って、カフェで会うことになりました。普通なら「年間何本売る」とか、「いくらで仕入れる」とか、商売の話になるでしょう。でも、世間話をして、「ケイタ、一緒にやろうぜ」と握手をして終わり。それが僕らの契約だったんです。そこからしばらく契約書すら交わしませんでした。

