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大都市圏で「銀色の電車」が増えた3つの理由 塗装が不要で軽量化も実現

 一方、ステンレス鋼やアルミニウム合金は、普通鋼よりも高価である反面、表面が腐食しにくい材料であるため、近年電車の構体の材料として多用されています。冒頭で紹介した銀色の電車とは、これらの金属材料で製造した構体を採用し、その表面の塗装を省略した電車のことです。

 それでは、なぜこのような銀色の電車が増えたのでしょうか。先ほど挙げた3つの理由をそれぞれ見ながら、説明しましょう。

塗装を省略できる

【1】の「構体の塗装を省略できる」は、銀色の電車が増えた大きな要因です。なぜならば、構体の塗装には手間と時間とコストが必要なので、それらが不要になることは大きなメリットがあるからです。

 鉄道会社の視点で見ると、塗装にかかるコストが不要になることは、電車の維持費を節約する上で重要です。とくに大都市圏の鉄道会社のように、数百両の電車を保有している大手企業にとっては、電車の維持費が少なくなることは大きなメリットです。

JR東日本常磐線の2階建てグリーン車。ステンレス鋼の構体にブルーのステッカーが貼られている

JR東日本常磐線の2階建てグリーン車。ステンレス鋼の構体にブルーのステッカーが貼られている

塗装設備が不要になる

【2】の「塗装設備が不要になる」は、車両工場(電車などの車両の重要部検査や修繕を行う施設)の周辺の環境を守るだけでなく、鉄道を支える労働者の作業環境を改善するのに重要です。なぜならば、構体の塗装に使う塗料には、人体に有害な有機溶剤がふくまれているからです。このため、有機溶剤が周囲に拡散しないように配慮するだけでなく、塗装作業を行う労働者の身体への負担を減らす必要があります。

 大都市圏の鉄道では、車両工場が住宅などの建物が密集した地域にあることが多いので、塗装設備から漏れてしまった有機溶剤が周囲の住環境を悪化させると問題視されやすく、その対策として厳重な設備を設ける必要があります。このため、車両工場から塗装設備がなくなることは大きなメリットがあります。

 また、塗装作業を行う労働者は、有機溶剤を扱う資格を必要とするだけでなく、定期的に健康診断を受ける必要があります。このため、塗装作業そのものが不要になることは、労働者にとっても身体に負担がかからないという大きなメリットがあります。

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