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「獺祭」旭酒造・桜井博志会長、72歳でNY移住へ 英語はできなくてもアメリカ進出決断

ニューヨークに建設した酒蔵(写真/旭酒造提供)

ニューヨークに建設した酒蔵(写真/旭酒造提供)

「我々は数十年前まで山口県の地元では4番手の負け組だったんです。泣きの涙で東京へ出て行って成功したから今がある。広く売っていかないと生き残れないという経験をしました。今はアジア向けが伸びていますが、やはり世界の中心はアメリカで、それも西海岸ではなく東海岸です。ここを攻略できれば、アメリカ全土に広がる。

 日本酒がブームといわれていますが、実際に飲んでいるのはほんの一部で、まだ浸透しているとは言えません。アメリカ市場の反応を見ながら、修正して造り込んでいくには、やはり現地に酒蔵を建てる必要があります。

 獺祭が入っていく上で、アメリカがビールとバーボンを飲む文化からワインを飲む文化にある程度変わっていたのは大きいですね。30~40年前に、ワインが普通の人が飲む飲み物じゃなかった時代に獺祭が入っていこうとしていたら苦労したと思います。それが味わう飲料を楽しむ文化ができてきたからこそ、日本酒も入っていけます」

 2016年にアメリカ進出計画が始まり、当初は2019年から醸造を開始する予定だったが、コロナ禍で計画が大幅に遅れたことなどもあり、酒蔵の投資額は30億円の予定が80億円に膨れあがった。

 さらに、日本から製造スタッフとして3人の社員を連れて行くため、現地で6人雇用する必要があった。今は円安に人件費の高騰が重なり、製造スタッフとなる現地社員は「ど素人」ながら日本円に換算すると年収1000万円程度を用意する。

 悪条件ばかりだが、アメリカ進出を中止するという選択肢はまったくなかったという。

「獺祭」と言えば山田錦というイメージがあるが、酒米についても日本産に加えてアメリカ産を調達する予定だ。

「主力となる山田錦をアーカンソー州で栽培しはじめています。もちろん、やってみなければわからなくて、そこは我々にとってチャレンジになります。アメリカには初代と2代目の工場長、入社10年超の主力社員の3人を連れていく。信頼しているこのメンバーなら、それなりの水準の酒は造れると信じています」

 そうして日本の獺祭に負けないアメリカの「DASSAI BLUE」を生み出すという。

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