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冷静ではいられない“最新で最高のポルシェ”「718ケイマンGT4 RS」の乗り心地 「だから乗りたくなかった…」

軽量化を追求したインテリア。視認性の良さはポルシェ伝統の利点であり、強烈なパフォーマンスをより的確に操縦できる

軽量化を追求したインテリア。視認性の良さはポルシェ伝統の利点であり、強烈なパフォーマンスをより的確に操縦できる

 そのエンジン音は、意外なほど静かでした。これがイタリアのスーパーカーであれば、エンジンはかなりの爆音とともに目覚め、周囲を威圧してくるところです。ところがGT4 RSの目覚めは「大人しいなぁ」と感じさせてくれるレベルです。ポルシェのフラット6サウンドは「イタリアンスーパーカーほど官能的サウンドではない」とも言えます。このあたりにもクルマのスペックをいかに表現するか、というポルシェならではの考えがあるのかもしれません。いずれにしても抑制の効いたエンジンサウンドは、冷静さを取り戻すにはいい効果を持っていました。

 しかし、冷静でいられたのはGT4 RSのシフトをドライブにセットするまでのこと。走り出してしまえば、心が希求していた「速さ」を目指してアクセルをググッと踏み込んでいたのです。研ぎ澄まされたカミソリで空気を切り裂くような鋭さで一気に加速し、あっという間に制限速度に達します。全身で軽快さを感じながらの加速と、レーシングカー的な硬さとしなやかさをバランスさせながら、4輪がきれいに路面をトレースしていくコーナリングはなんとも心地がいい。相当な無理さえしなければ、ミッドシップならではのニュートラルな安定感を維持しながらハイアベレージで駆け抜けてくれます。さらに、先程まで抑制が効いていると思っていたエンジンサウンドは、一気呵成といわんばかりに叫び声を上げています。

走りで「下剋上」が起きている?

 そんな状況ですから、もはや一般道ではフラストレーションばかりが蓄積していきます。心はすでにしっかりと熱くなっていて、これまで「乗ってはいけない」と抑制して過ごしてきたことなど、すっかり忘れているのです。

「だから手を出すなと言ったじゃないか」。そんな思いを抱きながら高速に乗り込みますが、ここではまさに真骨頂。自分自身の振る舞いを落ち着かせようとしますが、クルマ自身がそれを許そうとはしません。なんとか自制できたのは「このままではライセンスがなくなる」という、冷静ならばすぐに理解できる常識に気が付いたからでした。この心を惑わせるほどのエンジンとシャープな走り、ポルシェならではの進化がもたらした魔力の賜物と言えます。

 ここで進化の道筋を整理してみましょう。まずノーマルのモデルが登場すると、次はより高性能な「ボクスターS」や「ケイマンS」、さらには「GTS」といったモデルを順次追加してくることは想像の範囲でした。実際、その期待どおりに計画は進められました。さらにその後には「GT4」や「GTS 4.0」といった、400馬力から420馬力といった水平対向6気筒エンジンを搭載したモデルを投入したところで「打ち止め」だと、私は勝手に考えていました。

 しかし、いま実際に運転しているのは、そこからさらに性能を向上させた500馬力というスペックのGT4 RSでした。搭載されているエンジンは、格上モデルの「911 GT3」(以下、GT3)に搭載された510馬力の4L水平対向6気筒エンジンとは基本的に同じもの。数字の上ではGT3より10馬力低くなっていますが、ポルシェのトップモデルにふさわしい性格と言えます。この馬力の差を理解した上で2台のパワーウエイトレシオ(馬力あたり重量)を比較してみると、GT3の2.81kg/PSに対して、GT4RSは2.83kg/PSであり、こちらもほぼ互角です。もちろんパワーウエイトレシオだけで走りのテイストが決まるものではありませんが、スポーツカーのパフォーマンスを決定する上では、重要な指標です。この点において上級モデルのGT3と互角の数値を実現し、おまけにボディはよりコンパクト。さらにエンジンの搭載位置はGT3のRR(リアエンジン・リアドライブ)に対して、GT4RSはMR(ミッドエンジン・リアドライブ)です。

 ひょっとすると、走りのパフォーマンスで下剋上が起きているかも、と思ってしまいます。ただ、それを確認するには両車をサーキットに持ち込み、しっかりとしたスキルのあるレーシングドライバーの分析による違いを聞くしかないかもしれません。

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