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【異次元の少子化対策の本末転倒】年収1000万円世帯、児童手当拡充で「年12万円支給」でも扶養控除廃止なら「15万円増税」

高校生に児童手当拡充&扶養控除廃止で家計負担の増減を試算。年収いくらなら得をする?損をする?

高校生に児童手当拡充&扶養控除廃止で家計負担の増減を試算。年収いくらなら得をする?損をする?

年収1000万円、1200万円なら「完全なマイナス」

 国民を騙しているような話である。北村氏は年収が多い家庭では、児童手当の拡充よりも扶養控除廃止によるマイナスのほうが大きく、負担増になるケースもあると指摘する。

「年収いくらの人の課税所得がいくらになるかは、医療費控除や生命保険料控除の有無などによって変わってくるので単純には言えませんが、そのあたりがないものとして高校生の子供1人分の扶養控除がなくなった場合の税額をシミュレーションしてみました。

 そうすると、年収800万円の人は前述した所得税率20%の水準にあたるので約10万9000円の増税になり、年12万円の児童手当があってもほぼプラスマイナスゼロ。年収1000万円の人なら約15万4000円の増税、年収1200万円なら約21万2000円も税負担が増えてしまう。完全なマイナスです。児童手当の所得制限を廃止すると言いながら、一定以上の所得者にはむしろ増税になるようなバランスの取り方を考えているわけです」

 2010年に当時の民主党政権が子ども手当(現・児童手当)を創設した際も、15歳までが対象だった年少扶養控除が廃止されている。それと同様のことが検討されているわけだ。

「課税所得が多い人は所得税率も高いため、扶養控除がなくなるなら年12万円をもらっても税金が増えるマイナスのほうが大きくなってしまう。所得税率はかつては最高で40%だったのが、高所得者を狙い撃ちにして最高税率45%に引き上げられた経緯がある。“お金があるところから税金を取る”という考え方が鮮明です。今回のケースではその分岐点が年収800万円のあたりということのようですが、そんな設定で『異次元の少子化対策』と言えるのかは甚だ疑問です」(北村氏)

 都内在住で中学生の子供2人を育てる金融機関勤務の40代男性・Aさんは年収1000万円程度だというが、「都心での子育てをするなかで、生活は決して楽ではない」と嘆く。

「仕事が深夜までかかることもあるから、都心部に住まなくてはならないが、家賃も買い物の値段も高い。児童手当が高校生まで拡充されて、所得制限が撤廃されるというから子育て世帯を応援してもらえるという話かと思ったら、むしろ負担が増えるかもしれないなんて、バカにするにもほどがある」(Aさん)

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