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「認知症による行方不明者」は10年で約2倍に “悲惨な事態”を防ぐためにできること

年々増え続ける「認知症行方不明者」

年々増え続ける「認知症行方不明者」

GPSを鞄のなかに

 こうした悲惨な事態を招きかねない「認知症による行方不明」には、どう対応すればよいのか。基本的な対策としては、衣服に住所と名前を縫い付けておくことが備えとなる。近年では、GPS機能のついたスマートフォンを利用するのが居場所の特定に有効とされているが、万全ではないようだ。

「認知症の方など高齢者はスマホを持ち歩く習慣がない人も多い。それよりも、よく持ち歩く鞄や靴に、市販の小型GPS端末を入れて居場所を把握できるようにするのが良いでしょう。月額数百円程度から利用できます」(横井氏)

 市区町村や地域のネットワークが活用できることも覚えておきたい。介護評論家の高室成幸氏が言う。

「自治体の地域包括支援センターに、『認知症の親が一人でこういうところに出かけて心配なんです』と事前に伝えておくと、いざ行方不明となった時の初動が早くなることが期待できます」

 また、より早期の発見を目指すには、本人の顔や全身を様々な角度から撮影した写真や、歩いている場面の動画を準備しておくことも有効だ。

「行方不明となった時に、市区町村などが運営する地域の認知症高齢者見守りネットワークに情報として流すことができます。ネットワークに参加する警察やタクシー会社らに情報をスムーズに渡すことができれば、その分、早期発見へとつながるでしょう」(同前)

「県認知症行方不明者家族の会」を立ち上げた沖縄県在住の安慶名達也さん(55)も、自らの経験からこう注意を促す。

「家族と同居していても一人になる時間はあり、行方不明になる危険は常につきまといます。散歩好きなど、認知症患者本人のライフスタイルのあり方は、地域のみんなで守っていくしかない。急速に無縁化が進むように思える時代ですが、草の根で見守りをつなげていくしかありません」

 経験者の言葉を重く受け止めたい。

※週刊ポスト2023年7月14日号

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