住まい・不動産

【高齢者が健康的に暮らせる家】バリアフリーの考え方ではない「五感への刺激」を重視する実践例

 また、天野氏はバリアフリーとは異なる“攻めのリフォーム”でボケ防止を期待できる可能性があるとも考えている。例えば、「小上がり」の設置だ。

「和室と廊下に2~3センチの段差があった場合、バリアフリーの考え方では転倒リスクがあるので段差を解消しますが、私の設計する“ボケない家”では反対に25~40センチほどの小上がりの和室に改築します。段差を昇り降りする機会が増えることで足腰が鍛えられるメリットがあり、高いところで眺めが変わることによって視界が広がり、脳への良い刺激になると考えます」

 風呂やトイレなど自宅の各所に手すりを設置し、段差を解消して「危険を排除する」という考え方ももちろん大切だが、より活動的でいられる家づくりを目指すというのが天野氏の考え方というわけだ。

 熟睡できるように寝室を木や植物の匂いで満たす、毎日の食事でワクワクできるようにバーカウンターのようなキッチン仕様に変えるなど、落ち着きと刺激のバランスの取れた家にしていくのだ。

 ちなみに、別掲表のようなリフォームで予算はそれぞれ最大で100万円ほどだという。

認知症の専門家も評価

 それでは、天野氏の“ボケない家づくり”を認知症予防研究の第一人者はどう見るのか。

 鳥取大学医学部教授の浦上克哉氏が語る。

「最近の議論では健康な人が自宅をバリアフリー化することは認知症の予防につながらず、むしろ足腰が弱まり外出時の転倒リスクを高める可能性が指摘されています。天野氏が提唱する小上がりのように、段差を意識することは認知症予防とリハビリの面で合理的だといえるでしょう」

 その他の試みも認知症予防につながり得るという。

「良質な睡眠により、寝ている間にアルツハイマー型認知症の原因といわれるタンパク質アミロイドβが除去されるという学説があります。夜間の眠りの質を高めるために日光を浴びたり、嗅覚を刺激することはグッドアイデアといえます」(浦上氏)

 研究の途上ではあるが、自宅のリフォームを工夫することが、“ボケない未来”につながる可能性は十分にある。

 まずはワクワクする家づくりを考えることが第一歩となるはずだ。

※週刊ポスト2023年7月14日号

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。