中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

日本人の英語能力が低いのは「正確に訳そう」とするから 目指すは「英語で理解しているから日本語に訳せない」境地

まずはYouTubeで英語の動画を見まくる

 前出のEF EPI英語能力指数はここまでのニュアンスを把握することを求めてはいませんが、大事なのは「コミュニケーションができる」ことに尽きます。不思議なのは、アメリカやイギリスなど英語が公用語の土地に住むと、半年ぐらいで相手が何を言っているかが分かるようになることです。

 そうすると、文法は間違っていようが、相手に伝わることを喋るようになる。これにより英語能力はドッカーンと向上します。文法的な誤りは後で学べばいい。私は日本人の英語能力が低いのは、「正確に言わなくてはいけない」と考えすぎるからで、そうした考えを植え込んだ教育にも問題があると思います。あとはより詳しく説明しようと、やたらと関係代名詞を入れ過ぎる。whoやらthatですが、実際、アメリカ人はあまり使わない。正確にしようと頑張って喋るから、関係代名詞を多用するのです。関係代名詞を使いすぎると英語がヘタクソだと思われます。

 実際、ツイッター(X)で自分のプロフィールを英語で書く人がいますが、やたらと関係代名詞が多い印象です。そうなると、固っ苦しい英語になってしまうのです。たとえば「私は日本が好きな日本人男性で、漫画も好きです」みたいなことを書く場合、「I am a Japanese man who loves Japan and comic books」となる。そんな英語は日常英語ではない。「I love Japan and comic books」だけでいいのです。

 日本語は普通に習得しているわけだから、年齢の壁はあれど、英語も普通に習得できるはずです。本気で習得したいなら、まずはひたすら自分の気になる題材に関し、YouTubeで英語の動画を見まくってみてはどうでしょう。それこそ野球やバスケが好きだったらいくらでも解説動画やら試合動画は出てくる。そこにかぶさる言葉をひたすら聞き続けるといつしか理解できるようになるものです。

 それこそ「今なんて言っていたの?」と誰かから言われた時「いやぁ、日本語には訳せない。英語で理解しているから」という境地になれます。そこまで行けば、時給が900円だのなんだのセコいことを言っている日本から出て、アメリカで時給30ドルのバイトができるようになるかもしれません。海外で数年間正社員として働き、がっぽり稼いで日本に戻るもアリ。実際にやるかどうかは別として、選択肢が広がるのは大事なこと。その際、自分の持っている能力に加え、英語力は必須。それだけ今後は英語が大切になります。なので、まずはYouTubeでもいいから、英語に慣れてくださいませ。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

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