田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国でスマホ&EV市場の相互参入が活発化 今度はEVメーカー・蔚来集団がスマホ市場参入

小米集団は電気自動車製造の承認を受ける

 これは自動車メーカーがスマホ業界に参入するケースだが、逆にスマホメーカーが自動車業界に参入する動きが数年前から盛んである。

 小米集団は2020年に上場前の小鵬汽車に対して4億ドル(592億円、1ドル=148円、以下同様)を出資しているが、2021年8月には自動運転技術を有する深動科技を7737万ドル(115億円)で買収、9月には電気自動車製造を目的として小米汽車(資本金100億元、2000億円相当)を設立した。この時点で雷軍CEOは「今後10年で100億ドル(1兆4800億円)の投資を行う」と発言している。バッテリーメーカー、自動車部品メーカーへの出資を行うなど、2024年の製品発売を目指し、自動車メーカーとして必要な技術のキャッチアップを進めている。海外メディアは2023年8月、小米集団は国家発展改革委員会から電気自動車製造の承認を受けたと伝えている。

 米国から高性能半導体の供給を絶たれ、スマホ事業では大きな打撃を受けた華為技術だが、打開策の一つとして、電気自動車のスマート化、自動運転に関するソリューションを提供する事業を強化している。北京汽車集団、長安汽車などと戦略的パートナーシップを結んでおり、さらに電池、モーター駆動、駆動システムなど電気自動車の研究開発を進めるベンチャー企業の賽力斯と業務提携を行っている。米国の厳しい規制の下でも今月から5G対応の新型スマホを発売するなど、その開発力の高さを改めて示した華為技術だが、EV関連事業の方も順調に進んでいる。

 中国の成長鈍化を懸念する見方があり、中国の日本化を懸念する意見もあるが、中国の社会体制や経済システムは日本とは大きく異なっている。人口、一人当たりGDP、保有資源の豊富さ、産業構造、経済発展段階など、日本とは違う点が多い。ミクロ面をみれば中国企業のイノベーション力は、依然として衰えていないことがわかるのではないだろうか。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。

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