大前研一 「ビジネス新大陸」の歩き方

そごう・西武をどう再建するか? 大前研一氏が「答えは簡単明瞭。ヨドバシカメラにすべて任せるべき」と説く理由

「人流を変える」最強の経営力

 もし私が「そごう・西武」の再建策を考えるとしたらどうするか? 答えは簡単明瞭だ。ヨドバシカメラにすべて任せる。同社は売上高では家電量販店業界の3位か4位だが、経営力はダントツだからである。

 創業者は藤沢昭和氏、現在の社長は長男の和則氏。非上場で家族経営という点ではビッグモーターと同じだが、その中身は月とスッポンだ。

 たとえば、旗艦店である東京の秋葉原店と大阪駅北口(梅田北ヤード)の梅田店は開業後、人の流れを完全に変えた。数ある家電量販店の中で売上高は梅田店が日本一、秋葉原店が第2位。ヨドバシカメラは経営だけでなく、出店する土地の選び方に長けているのだ。

 今回、ヨドバシカメラはフォートレスの5倍の3000億円を出資して西武池袋本店の不動産を取得した。池袋駅に直結した最高の立地を手に入れたわけで、それを最大限に活かす戦略を練りに練っているだろう。

 私はマッキンゼーでカメラメーカーの仕事をしていた当時、ヨドバシカメラに苦汁をなめさせられた。ヨドバシカメラはメーカーの「期末報奨金」を前提に銀行から資金を借り入れ、それを価格に反映して他店より大幅に安く売ったのである。このため卸売店は正規ルートではなく、ヨドバシカメラ新宿店から買うようになってしまった。あれほどしたたかな会社は見たことがない。今はITシステムもしっかりしており、“業界最強の経営力”と言っても過言ではないだろう。

 その怖さを知っている私に言わせれば、ヨドバシカメラは「そごう・西武」にとって最高の“助っ人”であり、渋谷や東京駅周辺のような再開発が進んでいない池袋の再興もヨドバシカメラを中核にすべきだと思う。そうすれば「池袋の街の賑わいや人流」は、いま以上に活発になるはずだ。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『「老後不安」を乗り越える シニアエコノミー』など著書多数。

※週刊ポスト2023年10月27日・11月7日号

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